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~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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「せんっぱーい」
「どわっ!?近寄るなぁぁぁぁっ!!」
「何でですか?先輩!ハント先輩っ!待ってくださいよっ!」
「俺に構うなぁぁっ!!!!」

こんなやりとりも、最近では見慣れた光景の一つになっている。
周りの人も「あぁ、いつものことか」という目で二人を見ている。
私もその一人。


仕事の合間に訪れる軽食堂。
トクハンの仕事の休憩では軽食堂を利用することが多い。
コーヒーを飲むだけなら武装班に行ってもいいんだけど、別のお仕事をしている手前なんだか悪い気がしてしまうからだ。
それに、ここにはアラゴの数少ないお友達・セス君が居るからちょうどいいと思って。
アラゴは恥ずかしがっているのか、いつも渋い顔をしている。
別に恥ずかしがること無いのにね。
友達少ないから私に見られるのが恥ずかしいのかしら?

しばらくして、もう一人アラゴのお友達が現れた。
ハンドラーのココちゃん。
アラゴの警察学校時代の後輩、らしい。
とっても素直で、とっても可愛い子。
何より、アラゴのことを本当に大好きな子。

そんな子がアラゴの側に現れてくれたことを、私は素直に嬉しいことだと思った。
いつも人を避けてばかりの奴だけどこんなにも慕ってくれる子が側に居てくれることは、アラゴにとってとても大切なことだと思った。

なのに

「・・・・・・」

胸の中に、煮えきらない何かがある。
もやもやとして。
どうにもすっきりしない。

「どうしたんですか?婦警さん」
「・・・・・・セス君・・・・・・」

差し出された紙コップ。
いつもはブラックなのに、今日はミルク入りだ。

「お疲れみたいでしたので、ミルクと砂糖多めにしてみました。お嫌いでしたか?」
「ううん、ありがと」

一口啜る。
コーヒーの苦みと佐藤の甘みが口の中に広がって、もやもやとしたモノを少しだけ流してくれた。

「うん、美味しい」
「お口にあって良かったです」

にこりと微笑む。
セス君もいい子。
何でこんないい子がアラゴの友達なのかしら?と思うことがあるくらい。

「刑事さんは・・・・・・相変わらずみたいですね」
「うん。ココちゃんから逃げ回っているみたい・・・・・・」
「本当に仕方のない人ですね」
「・・・・・・」
「・・・・・・婦警さん?」
「え?あ、うん、そう・・・・・・だね・・・・・・」

いやだ。
あたしなんであんなことを・・・・・・
なんでアラゴの隣にいるのがあたしじゃないんだろう、なんて思ったの?
私は・・・・・・
私は・・・・・・・・・

「・・・・・・婦警さんは、刑事さんのことが好きなんですか?」
「なっ!?セス君!?」
「好きなんですか?」
「・・・・・・ち、違うわ。あいつはそんなんじゃない。私が好きだったのは、ユアンだもの・・・・・・」

もう、死んでしまったけれど。
だけど、好きだった気持ちは変わらない。
今だって、私が好きなのはユアンのまま。

「双子のお兄さんでしたっけ?」
「そう」
「けど、双子ならば重なる部分も多いでしょう?本当は、刑事さんに惹かれてるんじゃないですか?刑事さんの隣に立っているココさんが羨ましいんじゃないですか?」
「・・・・・・ユアンとアラゴは別人よ・・・・・・。全然似てない。それに・・・・・・」
「それに?」
「・・・・・・どうやったって、私とアラゴじゃ辛いことを思い出しちゃうから・・・・・・」

きっと私たち二人じゃ乗り越えられない。
素直に幸せを喜ぶことなんてきっと出来ない。

「だから、私じゃだめなの。あいつの横に立つのは、私じゃだめ。幸せになるためには、幸せに笑って見せるためには・・・・・・」

そうじゃなきゃ、ユアンに顔向けなんて出来ない・・・・・・。

「・・・・・・『Vim Patior』・・・・・・」
「え?」
「何でもありません。独り言です」
「そう・・・・・・?」
「さて、あんまり暴れられても困るから刑事さん捕まえてきますね」
「う・・・・・・うん・・・・・・」

セス君の背中を見送った。
会話を思い出して困惑する。

「やだ、私ったら子供あんな話するなんて・・・・・・」

本格的に疲れているのかもしれない。
今日は早めに帰って休もう。


□■□


「け~いじさ~ん」
「っ!?セスっ!!!」
「ひどいな~、傷ついちゃうな~。そんなあからさまに嫌な顔しなくてもいいのに」

軽食堂を飛び出した刑事さんが向かいそうな場所は何となく見当がついた。
人気の少ない、日当たりの悪い、そんな場所。
条件が揃っている場所などいくつもない。
足を向けた一番初めの場所に刑事さんは居た。

「ココさんなら先ほど仕事に戻りましたよ。えらくしょげてましたけど」
「・・・・・・仕方ねぇだろう・・・・・・あいつ飛びついてこようとするんだ。怪我させちまう・・・・・・」
「だからさっさと話してしまえばいいんですよ。その力のこと」
「ふざけろ。んなこと出来っかよ!」
「じゃぁ僕に下さいよ。そうしたら万事解決ですよ?」
「冗談じゃねぇ。おめぇにくれてやるもんなんて髪の毛一本ねぇよ」
「まったく、わがままな人ですねぇ」

あれもこれもと望むくせ、何一つ手に入れることのない哀れな人。
力を行使する代償を誰にも求められない、可哀想な人。
あんなにも、貴方を求めている人が居るというのに。
触れることすら叶わない。

こんなこと、僕の趣味じゃない。
ならば、きっとこれは『彼』の性分なのだろう。
『僕』は刑事さんの体を、抱きしめた。

「・・・・・・大変不本意ですが・・・・・・」
「それはこっちの台詞だっ!!何してるんだ馬鹿野郎っ!?」
「こうでもしないと、あの人は貴方の温度を知ることすら出来ないんです」
「はぁ?意味わかんねぇことほざくなっ!?離せっ!!」
「刑事さんには難しいかもしれませんね?」
「おまっ!?人のこと馬鹿にしやがってっ!!!!」
「馬鹿なのは事実でしょう?」

刑事さんがとうとう拳を振り挙げてきたので殴られる前に離れた。
まぁ、時間的にも十分だろう。

「でも、これだけは覚えておいて下さい。『僕』は抑圧と革命を司る者。抑圧に耐えるものにはいくらだって手を貸すんです」

そう、たとえば彼女のように。
たとえば、貴方のように。

「・・・・・・それくらい知ってらぁ。抑圧と革命のオルク様なんだろう?」

きっと、貴方はその意味を理解していない。
貴方自身が抑圧の中にいることを、自覚すらしていない。

「刑事さんのそういう馬鹿みたいなところ、『僕』は好きですよ?」

僕は、とても腹立たしいですけど・・・・・・。

「・・・・・・俺はお前みたいのは嫌いだよ」

吐き捨てるように、刑事さんは言った。
反吐が出そうなのはこちらだというのに。

あぁ、世の中理不尽だ。
こんなにも、こんなにも。
狭く息苦しい。


□■□


軽食堂に戻ると、婦警さんが頬を膨らませて頬杖を付いていた。

「あ、やっと戻ってきた。もう・・・・・・どこまで行ってたのよ・・・・・・」
「おぉ・・・・・・悪いな。ちょっとそこまで、な?」
「せっかくセス君が淹れてくれたコーヒー冷めちゃったわよ?」
「しょうがねぇだろ?ココの奴が追いかけてくるんだから・・・・・・」
「逃げなきゃいいだけの話じゃない」
「なんでお前がそんなにピリピリしてるんだよ・・・・・・」
「知らないっ!!」

とうとうそっぽを向いてしまった。
刑事さんも、その鈍さをいい加減どうにかしたらいいのに。
僕は新しいく淹れ直したコーヒーを運ぶ。

「まぁまぁ、婦警さんもそんなに怒らないで下さいよ」

刑事さんは何も言わずにずるずる音を立てて啜った。
嫌な顔をするくせに飲むんだからいまいちよくわからない。
ついで婦警さんにも2杯目を渡す。
コトリ、紙コップ特有の軽い音がした。
手放した温もりの代わりに、その体温を、抱く。

「あ、ありがとうセスく・・・・・・っ、セス君!?」
「んなぁぁっっ!?!?お前リオに何してやがるっ!!!!」

おもしろいくらいに動揺した声。
あぁ、滑稽だ。

「何って・・・・・・見ての通り抱擁です。イライラしている時は人肌の温もりがリラックス効果を上げるんですよ?」
「そうじゃねぇっ!!お前がリオに触んなっっ!!」
「別に、婦警さんは刑事さんの彼女ってわけでもなし、刑事さんに指図されるのは筋違いというものです。婦警さんが嫌がるなら話は別ですけどね」
「お前みたいなの!イヤに決まってるだろうがっ!!」
「だそうですけど?婦警さんはどうなんです?」
「わ、わ、わたしっ!?」

裏えった声。
上昇する体温。
例え嫌がられたとしても、離すつもりなどないと言えばどんな顔をするだろう。

・・・・・・こんな形でしたあの人を感じられない貴女は可哀想な人だ。
私という人形を介した温度しか感じられない貴女は不幸だ。

あぁ。
この世は圧迫にまみれている。
誰しも、何かに押さえつけられ。
挙げ句、自らを押さえつける。
彼も。
彼女も。
私も。

誰もが、圧迫に耐えている。

圧迫に、耐えている・・・・・・


Vim Patior


セスリオと私は豪語する。
が、本質だけをいえば愛の感情を抑圧されているリオを見て
オルク様がいてもたってもいられなくなったっちゅー話。
だから本当はオルリオなのかもしれない。
でもオルク様はセッ様と同一人物なのでセスリオってことで。
2011/02/12

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