~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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今日も一人で、パパが帰ってくるのを待つ。
いつもは待ちきれなくって寝てしまうけど、今日だけは起きていようって思った。
今日は私の誕生日だから。
ある、あめのよるに
「遅くなるかもしれないけど、ちゃんと帰ってくるからな」
「帰ってきたらちゃんと起こすから、一度寝てるんだぞ?」
パパはそう言って、まだ瞼を擦っている私の頬にキスをしてお仕事に出かけていった。
それはいつものこと。
そして。
パパが約束を守らないのも、いつものこと。
寝ている私を起こしてくれたことなんて一度もない。
リビングで寝てしまった私をそっと寝室に運んでくれて、朝は私よりも早くに起きて行ってしまうことだってあった。
それでも、パパが帰ってきたとわかるのはほんのわずかな痕跡があるから。
冷めて堅くなったかじりかけのトーストに、ぬるいミルク。
それと、
『行ってきます』
殴り書きをしたメモの切れ端。
わかってる。
お仕事が忙しいんだって。
早くに帰ってきた日だって、難しい顔をして新聞を読んでいる。
お土産だよと手渡された袋がいやに大きくて。
それは絵本と一緒に、たくさんのゴシップ誌が入っていたことだって知っている。
おうちに帰っても、パパはお仕事をしているんだって知っている。
パパがお仕事を誇りに思っていることを知っている。
ロンドンに住む沢山の人のために、毎日毎日へとへとになるまで頑張っているって知ってる。
お仕事をしているパパは好き。
疲れているのに「ただいま」って笑って頭を撫でてくれるパパが好き。
私も、いつかパパのようになりたいって思う。
疲れているパパのお手伝いが出来ればいいなって思う。
でもパパには言ってあげないの。
秘密にしておいて、いつかびっくりさせてあげるの。
私はパパの言葉を信じない。
パパが約束を破るのは、お仕事を頑張っているからだって知っているから。
わがままなんて言わずに、パパが帰ってきてくれるのをずっと待つの。
だから今日も私は、ソファーの上で毛布にくるまってパパの帰りを待つ。
テーブルの上のママの写真を眺めて、パパが帰ってくるのを一人で待つの。
こっくりこくっり、睡魔が襲ってきてもほっぺたを叩いて追い出してやるの。
その日は雨だった。
ここ最近はずっと雨が降っている。
しとしとしとしと。
テレビから流れるニュースは難しくてよくわからないけれど、テムズ川がいつもの倍以上の水かさになっているのを映し出していた。
最後にパパと遊びに行ったのはいつだろう。
思いだそうとしたけど、思い出せない。
睡魔が頭の中を侵略しようとしているからだ。
窓を叩く雨音が耳に心地よくて、次第に思考がうつらうつらしてくる。
眠っちゃだめ・・・・・・
今日は、私の誕生日なんだから・・・・・・
今日くらい、わがまま言ってもいいでしょう?
寝ないで朝まで遊んでもいいでしょう?
私が起きるまで一緒のベッドに寝ていて、ってお願いしてもいいでしょう?
本当は寂しいって、言ってもいいでしょう?
一人はイヤだって、言ってもいいでしょう?
今日だけ。
今日だけだから。
明日からはいい子にするから。
だから、お願い。
今日だけ・・・・・・許して・・・・・・?
□■□
──ピンポーン
チャイムの音で目が覚めた。
外はまだ暗い。
時計は、23時を過ぎた頃。
パパだ!
パパが帰ってきたに違いない。
大慌てで玄関に走った。
ちゃんと帰ってきてくれた!
私の誕生日に帰ってきてくれた!
後ちょっとしかないけれど、そんなことはどうでもいいの!
思いっきり抱きついて、わがままを言わせて?
「パパっ!」
私は靴も履かずに玄関を開けた。
靴を履くわずかな時間すらも惜しいと思った。
玄関の向こうは、相変わらずの雨だった。
冷たい空気が、私の頬を撫でた。
そこに立っていたのはパパじゃなかった。
「おじさん、だぁれ?」
聞いてから思い出した。
名前は知らないけど、パパの『あいぼう』の人だ。
写真を見せてもらったことがある。
なんだか疲れた顔をしている。
体中ぼろぼろだし、所々血で汚れていた。
不意に、私の頬が涙で濡れた。
理由はわからない。
わからないけれど、涙が止まらない。
「・・・・・・パパは・・・・・・?」
私は涙声でおじさんに問いかけた。
おじさんは顔をしかめた。
おじさんも泣き出しそうな顔をしていた。
「ルパートは・・・・・・」
聞かなくても、本当はわかっていた。
パパは
きっと・・・・・・
「君に届け物を頼まれたんだ・・・・・・」
差し出された、ピンク色のチューリップの花束。
両手でも抱えきれないくらいの、大きな花束。
かなり雨に打たれたのか、どれもくったりと元気を無くしていた。
「・・・・・・パパは、帰ってくるの?」
花束に顔を埋めて、私は聞いた。
聞かなければ、いけないと思った。
私の為にも、パパの為にも。
この、おじさんの為にも。
「君のパパは・・・・・・ルパートは・・・・・・」
わかってる。
パパは嘘つきだから。
「ルパートは、帰ってこないよ・・・・・・もう二度と・・・・・・」
「お仕事、なのよね?お仕事頑張ってるから、パパは帰ってこないのよね?」
「あぁ、そうだ。あいつは、仕事を頑張ったんだ・・・・・・」
おじさんが、声を押し殺して泣いていた。
『ちゃんと帰ってくるからな』
パパは嘘をついた。
パパは帰ってこない。
でもしょうがないの。
いつも、パパは嘘つきだったから。
私は、嘘つきのパパが好きだった。
パパが嘘をつくのは、お仕事を頑張っている時だけだから。
誰かのために頑張るパパが、大好きだった。
そんなパパのようになりたいって、思ってた。
わがままなんて言わないいい子でいようって、思ってた。
でも、今日だけ。
今日だけは、私の誕生日だから。
いいよね?
わがまま言っても、いいよね?
淋しいよ。
悲しいよ。
一人はイヤだよ。
ねぇ、パパ。
側にいて?
私の側に、ずっといて?
「パパ・・・・・・」
おじさんが私のことを抱きしめた。
ちょっとだけ、パパに似ていた。
「・・・・・・パ、パ・・・・・・ァ・・・・・・」
私は泣いた。
ロンドンに降る土砂降りの雨のように、泣いた。
私の4歳の誕生日。
その日、パパは死んだ。
ルパート回想回のココたんサイドのお話と思っていただければ。
年齢はわりと適当です。
回想時の写真と20年前という記述から
現在のココたんが24歳前後と推察しての年齢です。
あんまり深くは考えてないです。
あ~ココたんを幸せにしてぇ・・・・・・・・・
2011/02/06
いつもは待ちきれなくって寝てしまうけど、今日だけは起きていようって思った。
今日は私の誕生日だから。
ある、あめのよるに
「遅くなるかもしれないけど、ちゃんと帰ってくるからな」
「帰ってきたらちゃんと起こすから、一度寝てるんだぞ?」
パパはそう言って、まだ瞼を擦っている私の頬にキスをしてお仕事に出かけていった。
それはいつものこと。
そして。
パパが約束を守らないのも、いつものこと。
寝ている私を起こしてくれたことなんて一度もない。
リビングで寝てしまった私をそっと寝室に運んでくれて、朝は私よりも早くに起きて行ってしまうことだってあった。
それでも、パパが帰ってきたとわかるのはほんのわずかな痕跡があるから。
冷めて堅くなったかじりかけのトーストに、ぬるいミルク。
それと、
『行ってきます』
殴り書きをしたメモの切れ端。
わかってる。
お仕事が忙しいんだって。
早くに帰ってきた日だって、難しい顔をして新聞を読んでいる。
お土産だよと手渡された袋がいやに大きくて。
それは絵本と一緒に、たくさんのゴシップ誌が入っていたことだって知っている。
おうちに帰っても、パパはお仕事をしているんだって知っている。
パパがお仕事を誇りに思っていることを知っている。
ロンドンに住む沢山の人のために、毎日毎日へとへとになるまで頑張っているって知ってる。
お仕事をしているパパは好き。
疲れているのに「ただいま」って笑って頭を撫でてくれるパパが好き。
私も、いつかパパのようになりたいって思う。
疲れているパパのお手伝いが出来ればいいなって思う。
でもパパには言ってあげないの。
秘密にしておいて、いつかびっくりさせてあげるの。
私はパパの言葉を信じない。
パパが約束を破るのは、お仕事を頑張っているからだって知っているから。
わがままなんて言わずに、パパが帰ってきてくれるのをずっと待つの。
だから今日も私は、ソファーの上で毛布にくるまってパパの帰りを待つ。
テーブルの上のママの写真を眺めて、パパが帰ってくるのを一人で待つの。
こっくりこくっり、睡魔が襲ってきてもほっぺたを叩いて追い出してやるの。
その日は雨だった。
ここ最近はずっと雨が降っている。
しとしとしとしと。
テレビから流れるニュースは難しくてよくわからないけれど、テムズ川がいつもの倍以上の水かさになっているのを映し出していた。
最後にパパと遊びに行ったのはいつだろう。
思いだそうとしたけど、思い出せない。
睡魔が頭の中を侵略しようとしているからだ。
窓を叩く雨音が耳に心地よくて、次第に思考がうつらうつらしてくる。
眠っちゃだめ・・・・・・
今日は、私の誕生日なんだから・・・・・・
今日くらい、わがまま言ってもいいでしょう?
寝ないで朝まで遊んでもいいでしょう?
私が起きるまで一緒のベッドに寝ていて、ってお願いしてもいいでしょう?
本当は寂しいって、言ってもいいでしょう?
一人はイヤだって、言ってもいいでしょう?
今日だけ。
今日だけだから。
明日からはいい子にするから。
だから、お願い。
今日だけ・・・・・・許して・・・・・・?
□■□
──ピンポーン
チャイムの音で目が覚めた。
外はまだ暗い。
時計は、23時を過ぎた頃。
パパだ!
パパが帰ってきたに違いない。
大慌てで玄関に走った。
ちゃんと帰ってきてくれた!
私の誕生日に帰ってきてくれた!
後ちょっとしかないけれど、そんなことはどうでもいいの!
思いっきり抱きついて、わがままを言わせて?
「パパっ!」
私は靴も履かずに玄関を開けた。
靴を履くわずかな時間すらも惜しいと思った。
玄関の向こうは、相変わらずの雨だった。
冷たい空気が、私の頬を撫でた。
そこに立っていたのはパパじゃなかった。
「おじさん、だぁれ?」
聞いてから思い出した。
名前は知らないけど、パパの『あいぼう』の人だ。
写真を見せてもらったことがある。
なんだか疲れた顔をしている。
体中ぼろぼろだし、所々血で汚れていた。
不意に、私の頬が涙で濡れた。
理由はわからない。
わからないけれど、涙が止まらない。
「・・・・・・パパは・・・・・・?」
私は涙声でおじさんに問いかけた。
おじさんは顔をしかめた。
おじさんも泣き出しそうな顔をしていた。
「ルパートは・・・・・・」
聞かなくても、本当はわかっていた。
パパは
きっと・・・・・・
「君に届け物を頼まれたんだ・・・・・・」
差し出された、ピンク色のチューリップの花束。
両手でも抱えきれないくらいの、大きな花束。
かなり雨に打たれたのか、どれもくったりと元気を無くしていた。
「・・・・・・パパは、帰ってくるの?」
花束に顔を埋めて、私は聞いた。
聞かなければ、いけないと思った。
私の為にも、パパの為にも。
この、おじさんの為にも。
「君のパパは・・・・・・ルパートは・・・・・・」
わかってる。
パパは嘘つきだから。
「ルパートは、帰ってこないよ・・・・・・もう二度と・・・・・・」
「お仕事、なのよね?お仕事頑張ってるから、パパは帰ってこないのよね?」
「あぁ、そうだ。あいつは、仕事を頑張ったんだ・・・・・・」
おじさんが、声を押し殺して泣いていた。
『ちゃんと帰ってくるからな』
パパは嘘をついた。
パパは帰ってこない。
でもしょうがないの。
いつも、パパは嘘つきだったから。
私は、嘘つきのパパが好きだった。
パパが嘘をつくのは、お仕事を頑張っている時だけだから。
誰かのために頑張るパパが、大好きだった。
そんなパパのようになりたいって、思ってた。
わがままなんて言わないいい子でいようって、思ってた。
でも、今日だけ。
今日だけは、私の誕生日だから。
いいよね?
わがまま言っても、いいよね?
淋しいよ。
悲しいよ。
一人はイヤだよ。
ねぇ、パパ。
側にいて?
私の側に、ずっといて?
「パパ・・・・・・」
おじさんが私のことを抱きしめた。
ちょっとだけ、パパに似ていた。
「・・・・・・パ、パ・・・・・・ァ・・・・・・」
私は泣いた。
ロンドンに降る土砂降りの雨のように、泣いた。
私の4歳の誕生日。
その日、パパは死んだ。
ルパート回想回のココたんサイドのお話と思っていただければ。
年齢はわりと適当です。
回想時の写真と20年前という記述から
現在のココたんが24歳前後と推察しての年齢です。
あんまり深くは考えてないです。
あ~ココたんを幸せにしてぇ・・・・・・・・・
2011/02/06
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