~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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ごつごつした歩きにくい廊下を歩いている。
この廊下を歩くのは好きじゃない。
自分の身長を覆う長さの古びたローブは意図せずに石の割れ目に引っかかってしまい、いちいち外すのが面倒くさい。
ここも数ヶ月前まではこんな廊下ではなかったのだが・・・・・・
「いい加減、地図の置き位置を変えなければならないかもしれないな」
何十度目かの繰り返し作業をしながら言葉が漏れた。
この先には昔のカーダの部屋がある。
カーダが書き貯めた地図の山ももちろんそこに保存されている。
数年前に入り口が塞がった。
だがそれは入り口を掘るだけで何とかなった。
しかし今回はそうもいかない気がする。
横道全体の天井が崩れ、せっかく掘った入り口も半分くらいが埋まってしまった。
入り口に続く廊下も、もう元の平らな部分はこれっぽっちも見えなくなっている。
いい加減限界だ。
誰かに頼んだら地図の搬出作業を手伝ってくれるだろうか?
そもそもあの狭い入り口に入れる者という制限もある。
「結局、私が一人でやらなけらばならないんだろうな・・・・・・」
一人ごちる。
こんな地図好きに付き合ってくれる奇特な人はこのバンパイアマウンテンにはそうはいないのだ。
リトル・ピープルの言葉を体現した小さな体を狭い入り口にねじ込んだ。
意外とこの入り口さえ通ってしまえばさして被害を受けていないことが口惜しい。
「しかし、あの量の地図を今度はどこに保存したものか・・・・・・シーバーに相談したら融通してくれるだろうか?」
一抱えや二抱えでは済まない。
かつての自分がしたこととは言えうんざりした。
「・・・・・・ん?」
目的地の部屋から、明かりが漏れている。
この部屋にわざわざ足を運ぶ者は自分自身を含めても片手で事足りる。
「あいつら・・・・・・またあの部屋で遊んでいるのか・・・・・・?」
あの部屋にある地図がかつてカーダが趣味で書き貯めたバンパイアマウンテンの横穴の地図だとも知らずに、宝の地図と信じている奴らだ。
きっと今日もあの部屋の地図をひっくり返しているに違いない。
ということはそのひっくり返った中から私は目的の一枚を探し出さなくてはいけないとうことだ。
これではどちらが宝探しをしているのかわからない。
再びため息を漏らしながら部屋に入る。
「お前達、宝の地図は見つかったか?」
もっとも、訂正してやるつもりのない私がため息を吐く資格もないのだろうが。
「あーっ!ハーだぁ!」
「ホントだ!ハーだ!ハーも宝探しにきたのぉ?」
「まぁ・・・・・・そんなところだ」
いつも以上に紙が散乱した部屋。
どうやら、これは骨が折れそうだ。
双子がかき分けた地図の山を私が再びかき分けるという何とも不毛なやり取り。
「ハーはこの部屋にある宝の地図がどれだか知っているんだよね?」
「まぁな」
これは、私が書いたものだからな。
知っていて当然だ。
「ただし、私が知っているのはどれが誰にとっての宝の地図かということだけ」
「んー?」
「どぅいうこと?」
「今私が探している宝の地図は、お前達にとっては何の役にも立たないただの紙切れだと言うことだ」
足下をかき分けながら、答える。
「そうなの?」
「宝の地図は一枚じゃないの?」
「あぁ、この地図を必要とする人の数だけ宝の地図はある」
お、今日はついている。
運良く目的の地図が見つかったではないか。
悪い時にはどれだけ探しても見つからないと言うのに。
「僕たちの分もちゃんとある?」
「ティダたちの地図どれなの?」
「ねーハーは知ってるんでしょう?」
「ハー教えて?どれが宝の地図なの?」
「それを教えるのは出来ないな」
「なんでー?」
「なんでー?」
「これを書いた奴の意志だからだ。『求めるならば自らの力で捜し求めよ』と。そうやって手に入れるから意味があるのだと言っていた」
もちろん、今考えた嘘だ。
この地図などバカにされるばかりで必要とされたことの方が少ない。
いつかわかってくれる。
いつか必要としてくれる。
そう信じて描き続けた地図。
だというのにこうしていざ必要とされると意地悪したくなるのは人としての性なのだろうか。
(──私はとうに人では無いのだがな)
苦笑する。
時々わからなくなる。
私と『カーダ』の境界線が曖昧になる。
かつては同一のモノだったのだから境界が無くて当然なのかもしれないけれど、私たちは二つの別の生き物だ。
私たちの道はあの湖で完全に分かれた。
そう思っていた。
でも、カーダはまだ私の中にも残っているのかもしれない。
私が感じているこの感情は、私自身ではなくきっとカーダのモノだ。
人ではない私が感じるコレはきっとカーダが感じた心に違いない。
ほんの僅かでも、カーダは救われたのだろうか。
描いた世界を、垣間見れているのだろうか。
(そうだといい・・・・・・そうであって欲しい・・・・・・)
救われないモノが、多すぎた。
未来を夢見たモノが、死んでいった。
やっと始まった未来を、見ずに行ってしまった。
(だから私が見届けるんだ。今ここに残れなかったモノの分まで、私が)
「ぶぅー!!ハーのいじわるーっ!」
「いじわるーっっ!!」
「あぁそうだ。私は意地が悪いんだ」
そして、誰よりも諦めが悪かった。
その体現が、今のこの姿。
未来を見よう。
この子達と一緒に。
いけるところまで。
やれるところまで。
「頑張ればきっと見つかる。諦めずに探すんだな」
「はぁい」
「がんばるー」
渋々返事を返して二人は再び地図をひっくり返す作業に戻った。
少し、申し訳ない気持ちになる。
なぜならここには二人の為の宝の地図は本当は無いのだ。
いつか、この子達のために描いてやろう。
今は無い、この子達のための宝の地図を。
新しい未来の地図を、この子達と描いていこう。
心の中でこっそりと誓い、私は静かに部屋を後にした。
treasure map
三周年御礼リクで頂いた『双子とハーキャットのお話』でした。
ハーキャットの位置づけはガネン・バンチャに続く三人目の親的な感じです。
とにかく温かく見守っちゃう感じ。
あぁっ!もうほんとカーダの分まで幸せを見届けて欲しいよ!!
リクエストありがとうございました!!
2011/05/06
この廊下を歩くのは好きじゃない。
自分の身長を覆う長さの古びたローブは意図せずに石の割れ目に引っかかってしまい、いちいち外すのが面倒くさい。
ここも数ヶ月前まではこんな廊下ではなかったのだが・・・・・・
「いい加減、地図の置き位置を変えなければならないかもしれないな」
何十度目かの繰り返し作業をしながら言葉が漏れた。
この先には昔のカーダの部屋がある。
カーダが書き貯めた地図の山ももちろんそこに保存されている。
数年前に入り口が塞がった。
だがそれは入り口を掘るだけで何とかなった。
しかし今回はそうもいかない気がする。
横道全体の天井が崩れ、せっかく掘った入り口も半分くらいが埋まってしまった。
入り口に続く廊下も、もう元の平らな部分はこれっぽっちも見えなくなっている。
いい加減限界だ。
誰かに頼んだら地図の搬出作業を手伝ってくれるだろうか?
そもそもあの狭い入り口に入れる者という制限もある。
「結局、私が一人でやらなけらばならないんだろうな・・・・・・」
一人ごちる。
こんな地図好きに付き合ってくれる奇特な人はこのバンパイアマウンテンにはそうはいないのだ。
リトル・ピープルの言葉を体現した小さな体を狭い入り口にねじ込んだ。
意外とこの入り口さえ通ってしまえばさして被害を受けていないことが口惜しい。
「しかし、あの量の地図を今度はどこに保存したものか・・・・・・シーバーに相談したら融通してくれるだろうか?」
一抱えや二抱えでは済まない。
かつての自分がしたこととは言えうんざりした。
「・・・・・・ん?」
目的地の部屋から、明かりが漏れている。
この部屋にわざわざ足を運ぶ者は自分自身を含めても片手で事足りる。
「あいつら・・・・・・またあの部屋で遊んでいるのか・・・・・・?」
あの部屋にある地図がかつてカーダが趣味で書き貯めたバンパイアマウンテンの横穴の地図だとも知らずに、宝の地図と信じている奴らだ。
きっと今日もあの部屋の地図をひっくり返しているに違いない。
ということはそのひっくり返った中から私は目的の一枚を探し出さなくてはいけないとうことだ。
これではどちらが宝探しをしているのかわからない。
再びため息を漏らしながら部屋に入る。
「お前達、宝の地図は見つかったか?」
もっとも、訂正してやるつもりのない私がため息を吐く資格もないのだろうが。
「あーっ!ハーだぁ!」
「ホントだ!ハーだ!ハーも宝探しにきたのぉ?」
「まぁ・・・・・・そんなところだ」
いつも以上に紙が散乱した部屋。
どうやら、これは骨が折れそうだ。
双子がかき分けた地図の山を私が再びかき分けるという何とも不毛なやり取り。
「ハーはこの部屋にある宝の地図がどれだか知っているんだよね?」
「まぁな」
これは、私が書いたものだからな。
知っていて当然だ。
「ただし、私が知っているのはどれが誰にとっての宝の地図かということだけ」
「んー?」
「どぅいうこと?」
「今私が探している宝の地図は、お前達にとっては何の役にも立たないただの紙切れだと言うことだ」
足下をかき分けながら、答える。
「そうなの?」
「宝の地図は一枚じゃないの?」
「あぁ、この地図を必要とする人の数だけ宝の地図はある」
お、今日はついている。
運良く目的の地図が見つかったではないか。
悪い時にはどれだけ探しても見つからないと言うのに。
「僕たちの分もちゃんとある?」
「ティダたちの地図どれなの?」
「ねーハーは知ってるんでしょう?」
「ハー教えて?どれが宝の地図なの?」
「それを教えるのは出来ないな」
「なんでー?」
「なんでー?」
「これを書いた奴の意志だからだ。『求めるならば自らの力で捜し求めよ』と。そうやって手に入れるから意味があるのだと言っていた」
もちろん、今考えた嘘だ。
この地図などバカにされるばかりで必要とされたことの方が少ない。
いつかわかってくれる。
いつか必要としてくれる。
そう信じて描き続けた地図。
だというのにこうしていざ必要とされると意地悪したくなるのは人としての性なのだろうか。
(──私はとうに人では無いのだがな)
苦笑する。
時々わからなくなる。
私と『カーダ』の境界線が曖昧になる。
かつては同一のモノだったのだから境界が無くて当然なのかもしれないけれど、私たちは二つの別の生き物だ。
私たちの道はあの湖で完全に分かれた。
そう思っていた。
でも、カーダはまだ私の中にも残っているのかもしれない。
私が感じているこの感情は、私自身ではなくきっとカーダのモノだ。
人ではない私が感じるコレはきっとカーダが感じた心に違いない。
ほんの僅かでも、カーダは救われたのだろうか。
描いた世界を、垣間見れているのだろうか。
(そうだといい・・・・・・そうであって欲しい・・・・・・)
救われないモノが、多すぎた。
未来を夢見たモノが、死んでいった。
やっと始まった未来を、見ずに行ってしまった。
(だから私が見届けるんだ。今ここに残れなかったモノの分まで、私が)
「ぶぅー!!ハーのいじわるーっ!」
「いじわるーっっ!!」
「あぁそうだ。私は意地が悪いんだ」
そして、誰よりも諦めが悪かった。
その体現が、今のこの姿。
未来を見よう。
この子達と一緒に。
いけるところまで。
やれるところまで。
「頑張ればきっと見つかる。諦めずに探すんだな」
「はぁい」
「がんばるー」
渋々返事を返して二人は再び地図をひっくり返す作業に戻った。
少し、申し訳ない気持ちになる。
なぜならここには二人の為の宝の地図は本当は無いのだ。
いつか、この子達のために描いてやろう。
今は無い、この子達のための宝の地図を。
新しい未来の地図を、この子達と描いていこう。
心の中でこっそりと誓い、私は静かに部屋を後にした。
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三周年御礼リクで頂いた『双子とハーキャットのお話』でした。
ハーキャットの位置づけはガネン・バンチャに続く三人目の親的な感じです。
とにかく温かく見守っちゃう感じ。
あぁっ!もうほんとカーダの分まで幸せを見届けて欲しいよ!!
リクエストありがとうございました!!
2011/05/06
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