~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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「・・・・・・バカみたい」
少女は自分自身にそう言った。
何を期待していたんだろう。
馬鹿馬鹿しい。
こんな場所には誰も寄りつかない。
こんな私には、誰も近づかない。
わかりきったことなのに、今更何を期待したんだろう。
「ほんの・・・・・・気まぐれよ・・・・・・」
全部今更。
期待など当に捨てたと思っていた。
向こうから慌てて逃げていったと思っていた。
それでも、私は未練たらしく何かにすがろうとしていた。
そんな自分が許せない。
自分が傷つくだけの儚いモノに何を求める。
忘れるの。
あの人のことなんか。
そうじゃなければ耐えられない。
一人で抱えられるモノなんて、ほんの僅かしかないのだから。
何もなかった。
何も起こらなかった。
幸せな夢を見ていただけ。
幸せに餓えていただけ。
ただそれだけ。
ここには誰も訪れなかった。
私はいつも通りに、一人きりで夜を明かした。
それだけ。
それだけだ。
少女は布団の中から這いずり出た。
のろのろと緩慢な動作で、自らの温もりに後ろ髪引かれながら布団を片づけた。
何故か出してしまったもう一組の布団も片づける。
顔を洗いに風呂場に向かう。
洗濯篭には何故かバスタオルが二枚も入っていた。
昨日雨で濡れたから使ったのだったかしら?
記憶が曖昧だ。
気を引き締めるつもりで冷たい水で顔を洗った。
指先がジンっとするほど冷たい水。
冷えきったこの家にお似合いの水。
脳の中のもやもやとしたモノが洗い流されるまで、何度も何度も水を浴びせた。
十数度目で、ようやく思考がはっきりし出した気がした。
鏡をのぞき込む。
大丈夫、いつもの自分だ。
完全に冷えきった顔をタオルで拭う。
昨日までの雨に湿気ったタオルだったが、そちらの方がほんの少し温かかった。
窓の外を見た。
久方ぶりの朝日が射し込み始めていた。
汚れが洗い流された街が、きらきら光って眩しい。
今日は晴天になりそうだ。
洗濯物を片づけてしまおう。
今まで部屋干ししていたモノもまとめて外で干し直すんだ。
気持ちがいいに違いない。
少女は寝間着を脱ぎ捨て制服に着替えると、再び洗面所に戻った。
途中、──ピィィィ、甲高い電子音が響いた。
何の音であるか、理解するのに優に10秒は要した。
音源に目を向ける。
久しく使った記憶のない、炊飯器だ。
炊きあがりの音だったのだろう。
今は保温にランプが灯り、蒸気口からご飯の香りが漂ってくる。
「・・・・・・なんで?」
少女は小首を傾げた。
お米をセットした記憶なんてないのに、不思議なこともあるものだ。
疑問に思いながら台所を通り抜けた。
少女は洗濯篭に入った洗い物を色柄なんて気にせずに洗濯機に放り込む。
昨日の雨で濡れた制服やタオルを無造作に移し変えた。
「あれ・・・・・・?」
篭の底に、見慣れないモノがあった。
平べったい、長方形のモノ。
恐る恐る手に取った。
「携帯・・・・・・電話?」
恐ろしシンプルな作りで、本体は黒一色。
ストラップの類は一つも付いていない。
もちろん、少女のモノではない。
少女は携帯電話など持ってはいなかった。
「・・・・・・っ、なんで・・・・・・っ・・・・・・」
少女は、その場に崩れ落ちた。
少女のモノではない携帯電話を胸に抱えて、涙を零す。
「なんで・・・・・・居ないんですか・・・・・・っ」
何もなかったはずなのに、あの人の痕跡だけはこんなにも残っている。
夢を見ていただけなのに、あの人の気配だけはこんなにも残っている。
なのに、居ない。
どこにも居ない。
また、私を置いて行ってしまった。
堪えられなくて、少女は男の名前を呼んだ。
呼ぼうとした。
「っ・・・・・・!?」
そして、初めて気が付いた。
自分が、男を呼ぶ名前すら知らなかったことを。
思い立って、握りしめていた携帯電話を開いた。
携帯電話とはプライベート情報の塊。
男のことが何か解るかもしれない。
勝手に覗くことは悪いと知りながら、それでも少女は携帯電話に手をかけた。
開いた画面は、真っ暗。
ボタンをいじっても反応がない。
すぐさまパワーボタンを押した。
一度押す。
反応はない。
もう一度、もう一度。
「・・・・・・なんで、なのよ・・・・・・」
何度押しても、携帯電話は一向に反応を見せてはくれなかった。
外はあんなにも晴れ渡ったというのに、見つめた画面の先はブラックアウトしたままだった。
第6-α話、イーピンsideのお話でした。
ようやっと本格的に確信に迫れてきた気がするのは私だけですか?
つか、やっと気づいてくれました。
お互いの名前を知るのはいつになるんでしょうね?
そろそろ名前を出さないとヒバピン詐欺と思われそうなので、いい加減名前を聞いてください。お願いします。
もう、お約束のようになっていますね。
一応書かせてください。
ヒの字もイの字も出てきませんが、これはヒバピンです。
2011/02/17
少女は自分自身にそう言った。
何を期待していたんだろう。
馬鹿馬鹿しい。
こんな場所には誰も寄りつかない。
こんな私には、誰も近づかない。
わかりきったことなのに、今更何を期待したんだろう。
「ほんの・・・・・・気まぐれよ・・・・・・」
全部今更。
期待など当に捨てたと思っていた。
向こうから慌てて逃げていったと思っていた。
それでも、私は未練たらしく何かにすがろうとしていた。
そんな自分が許せない。
自分が傷つくだけの儚いモノに何を求める。
忘れるの。
あの人のことなんか。
そうじゃなければ耐えられない。
一人で抱えられるモノなんて、ほんの僅かしかないのだから。
何もなかった。
何も起こらなかった。
幸せな夢を見ていただけ。
幸せに餓えていただけ。
ただそれだけ。
ここには誰も訪れなかった。
私はいつも通りに、一人きりで夜を明かした。
それだけ。
それだけだ。
少女は布団の中から這いずり出た。
のろのろと緩慢な動作で、自らの温もりに後ろ髪引かれながら布団を片づけた。
何故か出してしまったもう一組の布団も片づける。
顔を洗いに風呂場に向かう。
洗濯篭には何故かバスタオルが二枚も入っていた。
昨日雨で濡れたから使ったのだったかしら?
記憶が曖昧だ。
気を引き締めるつもりで冷たい水で顔を洗った。
指先がジンっとするほど冷たい水。
冷えきったこの家にお似合いの水。
脳の中のもやもやとしたモノが洗い流されるまで、何度も何度も水を浴びせた。
十数度目で、ようやく思考がはっきりし出した気がした。
鏡をのぞき込む。
大丈夫、いつもの自分だ。
完全に冷えきった顔をタオルで拭う。
昨日までの雨に湿気ったタオルだったが、そちらの方がほんの少し温かかった。
窓の外を見た。
久方ぶりの朝日が射し込み始めていた。
汚れが洗い流された街が、きらきら光って眩しい。
今日は晴天になりそうだ。
洗濯物を片づけてしまおう。
今まで部屋干ししていたモノもまとめて外で干し直すんだ。
気持ちがいいに違いない。
少女は寝間着を脱ぎ捨て制服に着替えると、再び洗面所に戻った。
途中、──ピィィィ、甲高い電子音が響いた。
何の音であるか、理解するのに優に10秒は要した。
音源に目を向ける。
久しく使った記憶のない、炊飯器だ。
炊きあがりの音だったのだろう。
今は保温にランプが灯り、蒸気口からご飯の香りが漂ってくる。
「・・・・・・なんで?」
少女は小首を傾げた。
お米をセットした記憶なんてないのに、不思議なこともあるものだ。
疑問に思いながら台所を通り抜けた。
少女は洗濯篭に入った洗い物を色柄なんて気にせずに洗濯機に放り込む。
昨日の雨で濡れた制服やタオルを無造作に移し変えた。
「あれ・・・・・・?」
篭の底に、見慣れないモノがあった。
平べったい、長方形のモノ。
恐る恐る手に取った。
「携帯・・・・・・電話?」
恐ろしシンプルな作りで、本体は黒一色。
ストラップの類は一つも付いていない。
もちろん、少女のモノではない。
少女は携帯電話など持ってはいなかった。
「・・・・・・っ、なんで・・・・・・っ・・・・・・」
少女は、その場に崩れ落ちた。
少女のモノではない携帯電話を胸に抱えて、涙を零す。
「なんで・・・・・・居ないんですか・・・・・・っ」
何もなかったはずなのに、あの人の痕跡だけはこんなにも残っている。
夢を見ていただけなのに、あの人の気配だけはこんなにも残っている。
なのに、居ない。
どこにも居ない。
また、私を置いて行ってしまった。
堪えられなくて、少女は男の名前を呼んだ。
呼ぼうとした。
「っ・・・・・・!?」
そして、初めて気が付いた。
自分が、男を呼ぶ名前すら知らなかったことを。
思い立って、握りしめていた携帯電話を開いた。
携帯電話とはプライベート情報の塊。
男のことが何か解るかもしれない。
勝手に覗くことは悪いと知りながら、それでも少女は携帯電話に手をかけた。
開いた画面は、真っ暗。
ボタンをいじっても反応がない。
すぐさまパワーボタンを押した。
一度押す。
反応はない。
もう一度、もう一度。
「・・・・・・なんで、なのよ・・・・・・」
何度押しても、携帯電話は一向に反応を見せてはくれなかった。
外はあんなにも晴れ渡ったというのに、見つめた画面の先はブラックアウトしたままだった。
第6-α話、イーピンsideのお話でした。
ようやっと本格的に確信に迫れてきた気がするのは私だけですか?
つか、やっと気づいてくれました。
お互いの名前を知るのはいつになるんでしょうね?
そろそろ名前を出さないとヒバピン詐欺と思われそうなので、いい加減名前を聞いてください。お願いします。
もう、お約束のようになっていますね。
一応書かせてください。
ヒの字もイの字も出てきませんが、これはヒバピンです。
2011/02/17
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