~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
バネズのことを探すのは簡単だ。
よほどの場合を除いて、自分の部屋にいるか闘技場にいるかのどちらか。
探す方の身としては探す張り合いもないくらい。
今日もバネズは闘技場にいた。
ずいぶん昔に両目が潰れ、光を失ったというのに剣やら槍やらを片手に若いバンパイアを楽しそうにあしらっていた。
「バネズ」
「ん?ダリウスか?っ、よっと!」
声を掛けたらすぐに気づいてくれる。
光を失ってからほかの五感がより敏感になっていると本人は言っていた。
本当かどうかはわからないけど、バネズは目が見えているのとほとんど変わらずに生活できているし、人を間違えるようなこともほとんど無い。
そうでなければ危ない武器を手に遊びに興じることなんて出来ないだろう。
相手にしていたバンパイアをひとしきり叩きのめしてからバネズが僕のそばまでやってきた。
「どうした?お前もやりたいのか?」
「バカ言わないでよ。ただでさえ訓練でくたくたなんだ。頼まれたってしないよ」
一日中闘技場に篭もっていられるバネズと一緒にしないでくれ。
「そうじゃなくてさ、ちょっと・・・相談」
「相談?」
「えっと、さ。・・・ママのところに、逢いに行かない?」
「・・・お前のか?」
「当たり前だろ?他に誰がいるっての?」
「そりゃあそうだが・・・、だがなダリウス。お前が母親に逢いたい気持ちはわかるが元帥がお許しにならんだろう」
今でこそわずかながら人間と交流が出てきたが、反発する声も大きい。
バンパニーズと和平はしても、人間とは一線を画しておくべきだという意見が未だ多数を占めている。
バネズはそれを危惧しているのだろう。
だが、そんなのは問題じゃない。
「大丈夫!バンチャ発案だもの」
「バンチャ元帥が?」
話のいきさつはこうだ。
僕は半バンパイアになって以降、ママと手紙のやりとりをしている。
直接逢うことが出来無いからバンチャが仲介役で手紙を運んでもらっているのだ。
はじめはそれだけでも繋がりが残っているだけで十分だった。
でも年数を重ねていくほどに逢えないことが寂しくなる。
「せめて一目でもいいから逢わせて欲しい」とママはバンチャに懇願したらしい。
「そしたらさ、バンチャが逢ってこいって言ってくれたんだ。もう十年も逢ってないんだし、ママはおじさんのことでも心痛めているから一目逢うくらい大目に見るって。他の元帥にも説得してくれたんだ!」
「・・・バンチャ元帥は昔から女に弱いからなぁ・・・」
光の映らない瞼をさらに手で押さえてバネズが首を横に振った。
「でさ、ママがバネズにも逢いたいって言ってるんだ」
「俺にも?」
「うん。僕がお世話になっている人だから挨拶したいって」
「・・・それも元帥は承知なんだな?」
「当たり前だ!半人前の弟子が外に出るんだ。着いていかない師匠があるか!」
突然割り込んできた大柄の男。
バネスはその声で誰なのかを察し、大きくため息をついた。
「閣下・・・そういうことは事後承諾ではなく事前に・・・」
「お前には話してなかったか?そりゃ悪かった!」
これっぽちも悪びれていない口調で話すのがバンチャ・マーチ元帥。
この話を僕に持ちかけてくれた張本人。
「大体、お前はずっとマウンテンに篭もりっぱなしだろ?たまには外の空気を吸ってこい」
「はぁ・・・わかりましたよ。閣下がそうおっしゃるなら」
「一緒に行ってくれるんだね!?」
「俺が行かないと言えばお前は一人でも行っちまいそうだしな」
仕方ない、といわんばかりの表情でバネズが僕の頭をがしがし撫でた。
側ではバンチャがうんうん頷きながら僕らを見ている。
「よしよし。話はまとまったみたいだな。じゃあ、あいつらのことも頼んだぞ?」
「へ?」
僕の間抜けな声があがるのと
「兄ちゃん!!」
「ダリウスお兄ちゃん!」
とてもよく聞き慣れた声を僕の耳が捕らえ、猛烈なタックル×二をお見舞いされるのはほとんど同時だった。
こんなことをするのは言わずと知れた、ブレダとティーダ。
双子は今年で七歳になる。
昔と違って体も大きくなってきて、、タックル一つが立派な攻撃。
打ち所が悪かったら悶絶確実だ。
今回は運良く急所は免れた。
「ったたた・・・ちょっと!?バンチャ!聞いてないんだけど!!」
「ん?話してなかったか?折角だからこいつらにも人間社会ってやつを見せてやろうと思ってな。なんせ俺らが連れていっても昼間は外を歩けなくて退屈させちまうんだ」
「だからって!」
「その点お前がいてくれればこいつらが外を歩ける。お前も母親に逢える。バネズも久方ぶりに外の空気を吸える。みんな万々歳じゃないか」
「ただの育児放棄だろ!?」
僕が叫んでもバネズは言葉も無く首を横に振るばかり。あきらめろ、ということなのだろう。
そんな僕らをさておいて、ブレダとティーダは目をきらきらさせていた。
「ブレダ、街に行くの初めて!」
「ティダも初めて!どんなところかな?」
「デンキできらきらしてるってパパが言ってたよ!」
「ニンゲンもたくさんいるって言ってた!」
「オミセっていう、ものがたくさんおいてある場所もあるんだって!」
「おいしいものもたくさんあるって!」
「「楽しみだねー!!!」」
「そうそう行く機会もないだろうから、しっかり遊んでこいよ!息子ども!」
「「はーい!!」」
威勢のいい父親と、それをしっかり受け継いでしまった子供たち。
本気でこいつらの将来が心配になる。
「・・・僕の意見は・・・」
「あるとお思いで?」
「ガネン・・・」
そうでした。
そんなもの、あるわけもなかった。
それから数時間、僕とバネズはガネンからしつこいくらいの諸注意を聞かされたのだった。
・・・ガネンの子煩悩すぎるところも、それはそれで問題だ。
こんな人たちに一族の未来を託してて良いのか不安すら覚えてしまう。
まあ、それはまた別の話。
またの機会に話すとしよう。
街へ行こう~準備編~
2011年1月インテで無料配布した
「傷師弟と双子の兄妹を広めたいだけの本」収録の書き下ろし部分です。
タイトル通り、続きます。
2011/02/15(サイト掲載)
よほどの場合を除いて、自分の部屋にいるか闘技場にいるかのどちらか。
探す方の身としては探す張り合いもないくらい。
今日もバネズは闘技場にいた。
ずいぶん昔に両目が潰れ、光を失ったというのに剣やら槍やらを片手に若いバンパイアを楽しそうにあしらっていた。
「バネズ」
「ん?ダリウスか?っ、よっと!」
声を掛けたらすぐに気づいてくれる。
光を失ってからほかの五感がより敏感になっていると本人は言っていた。
本当かどうかはわからないけど、バネズは目が見えているのとほとんど変わらずに生活できているし、人を間違えるようなこともほとんど無い。
そうでなければ危ない武器を手に遊びに興じることなんて出来ないだろう。
相手にしていたバンパイアをひとしきり叩きのめしてからバネズが僕のそばまでやってきた。
「どうした?お前もやりたいのか?」
「バカ言わないでよ。ただでさえ訓練でくたくたなんだ。頼まれたってしないよ」
一日中闘技場に篭もっていられるバネズと一緒にしないでくれ。
「そうじゃなくてさ、ちょっと・・・相談」
「相談?」
「えっと、さ。・・・ママのところに、逢いに行かない?」
「・・・お前のか?」
「当たり前だろ?他に誰がいるっての?」
「そりゃあそうだが・・・、だがなダリウス。お前が母親に逢いたい気持ちはわかるが元帥がお許しにならんだろう」
今でこそわずかながら人間と交流が出てきたが、反発する声も大きい。
バンパニーズと和平はしても、人間とは一線を画しておくべきだという意見が未だ多数を占めている。
バネズはそれを危惧しているのだろう。
だが、そんなのは問題じゃない。
「大丈夫!バンチャ発案だもの」
「バンチャ元帥が?」
話のいきさつはこうだ。
僕は半バンパイアになって以降、ママと手紙のやりとりをしている。
直接逢うことが出来無いからバンチャが仲介役で手紙を運んでもらっているのだ。
はじめはそれだけでも繋がりが残っているだけで十分だった。
でも年数を重ねていくほどに逢えないことが寂しくなる。
「せめて一目でもいいから逢わせて欲しい」とママはバンチャに懇願したらしい。
「そしたらさ、バンチャが逢ってこいって言ってくれたんだ。もう十年も逢ってないんだし、ママはおじさんのことでも心痛めているから一目逢うくらい大目に見るって。他の元帥にも説得してくれたんだ!」
「・・・バンチャ元帥は昔から女に弱いからなぁ・・・」
光の映らない瞼をさらに手で押さえてバネズが首を横に振った。
「でさ、ママがバネズにも逢いたいって言ってるんだ」
「俺にも?」
「うん。僕がお世話になっている人だから挨拶したいって」
「・・・それも元帥は承知なんだな?」
「当たり前だ!半人前の弟子が外に出るんだ。着いていかない師匠があるか!」
突然割り込んできた大柄の男。
バネスはその声で誰なのかを察し、大きくため息をついた。
「閣下・・・そういうことは事後承諾ではなく事前に・・・」
「お前には話してなかったか?そりゃ悪かった!」
これっぽちも悪びれていない口調で話すのがバンチャ・マーチ元帥。
この話を僕に持ちかけてくれた張本人。
「大体、お前はずっとマウンテンに篭もりっぱなしだろ?たまには外の空気を吸ってこい」
「はぁ・・・わかりましたよ。閣下がそうおっしゃるなら」
「一緒に行ってくれるんだね!?」
「俺が行かないと言えばお前は一人でも行っちまいそうだしな」
仕方ない、といわんばかりの表情でバネズが僕の頭をがしがし撫でた。
側ではバンチャがうんうん頷きながら僕らを見ている。
「よしよし。話はまとまったみたいだな。じゃあ、あいつらのことも頼んだぞ?」
「へ?」
僕の間抜けな声があがるのと
「兄ちゃん!!」
「ダリウスお兄ちゃん!」
とてもよく聞き慣れた声を僕の耳が捕らえ、猛烈なタックル×二をお見舞いされるのはほとんど同時だった。
こんなことをするのは言わずと知れた、ブレダとティーダ。
双子は今年で七歳になる。
昔と違って体も大きくなってきて、、タックル一つが立派な攻撃。
打ち所が悪かったら悶絶確実だ。
今回は運良く急所は免れた。
「ったたた・・・ちょっと!?バンチャ!聞いてないんだけど!!」
「ん?話してなかったか?折角だからこいつらにも人間社会ってやつを見せてやろうと思ってな。なんせ俺らが連れていっても昼間は外を歩けなくて退屈させちまうんだ」
「だからって!」
「その点お前がいてくれればこいつらが外を歩ける。お前も母親に逢える。バネズも久方ぶりに外の空気を吸える。みんな万々歳じゃないか」
「ただの育児放棄だろ!?」
僕が叫んでもバネズは言葉も無く首を横に振るばかり。あきらめろ、ということなのだろう。
そんな僕らをさておいて、ブレダとティーダは目をきらきらさせていた。
「ブレダ、街に行くの初めて!」
「ティダも初めて!どんなところかな?」
「デンキできらきらしてるってパパが言ってたよ!」
「ニンゲンもたくさんいるって言ってた!」
「オミセっていう、ものがたくさんおいてある場所もあるんだって!」
「おいしいものもたくさんあるって!」
「「楽しみだねー!!!」」
「そうそう行く機会もないだろうから、しっかり遊んでこいよ!息子ども!」
「「はーい!!」」
威勢のいい父親と、それをしっかり受け継いでしまった子供たち。
本気でこいつらの将来が心配になる。
「・・・僕の意見は・・・」
「あるとお思いで?」
「ガネン・・・」
そうでした。
そんなもの、あるわけもなかった。
それから数時間、僕とバネズはガネンからしつこいくらいの諸注意を聞かされたのだった。
・・・ガネンの子煩悩すぎるところも、それはそれで問題だ。
こんな人たちに一族の未来を託してて良いのか不安すら覚えてしまう。
まあ、それはまた別の話。
またの機会に話すとしよう。
街へ行こう~準備編~
2011年1月インテで無料配布した
「傷師弟と双子の兄妹を広めたいだけの本」収録の書き下ろし部分です。
タイトル通り、続きます。
2011/02/15(サイト掲載)
PR
この記事にコメントする