忍者ブログ
~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
[103]  [3]  [102]  [101]  [100]  [99]  [98]  [97]  [96]  [94]  [95
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

たまの非番。
いつもよりほんの少し遅く起きる朝。
カーテンを開けると眩しい日の光が射し込む。
お天気もいいしお出かけ日和。
前々から予定していた買い物に出かけよう。
心に決めてベッドから足を降ろすと、もふっとした何かに足先が触れた。
パートナーのコロだ。
足下で寝ていたコロがクゥンと小さく甘えた声を出す。

「ご飯、ちょっと待っててね」

顔を洗って身だしなみを整え、着替えをすませて自分の分とコロの分の朝ご飯を用意する。
パパは今日も朝早くに家を出て行ってしまったらしい。
非番だからと気を使って起こさずに行ったのだろう。
少しだけ申し訳ない気持ちになりながら、コロと二人でちょっと遅めの朝ご飯を食べた。

ご飯の後、日頃溜めがちな洗濯物を片づける。
お天気もいいからきっと気持ちよく乾いてくれることだろう。
それからコロのブラッシング。
お出かけに連れていけないからその分の謝罪も込めていつもよりも丁寧に毛を梳いてあげた。
コロもそれがどういうことか察したみたい。
ブラッシングが終わるととことこリビングへ向かい、日当たりの良い窓際を陣取って早速昼寝の体勢に入ってしまった。

「ごめんね?コロ」

鳴き声こそ漏らさなかったが、行ってらっしゃいとばかりに尻尾を数回パタパタと振って答えて見せた。
パートナーのご機嫌取りには成功したらしい。
私は部屋に戻って外出の準備をした。
クローゼットを開けて洋服を見繕う。
さて、何を着ていこうかしら?
仕事中がもっぱらパンツスタイルのせいか、最近私服ではスカートが多い。
今日はお天気もいいし、気温も高そうだから少し薄着くらいのでいいかもしれない。
お気に入りのワンピースに薄手のカーディガン、それから少しだけヒールのあるミュールを選んだ。
おかしなところがないか、くるり一回転。
うん、大丈夫そう。
鏡の前ではにかむ。
誰に見せるわけでもないのにこうやってあれこれ考えてしまうのは女の子の性なのだろうか?

ワンピースと同色のハンドバックを手に取り、コロに留守を頼んでから私は家を出た。
車を使ってもいいのだけれど、市街地に行くにはあまり便利が良くない。
普段はコロがいるので使用しないバスに乗ることにした。
ローテーションで回ってくる非番だったので特に意識していなかったが、世間一般では今日は休日に当たる日だったみたい。
バスはとても混んでいた。
やっぱりコロを連れてこなくて正解。
町中では訓練された犬に対しておもしろ半分にいたずらをしてくる人が少なくない。
そうでなくてもこの混雑、不意に踏まれてしまうことは多々あった。
承知で付いて来たがることはあったが、パートナーとしてはあまり容認できない。
怪我する可能性があるのを見過ごすことはしたくない。

だんだんと市街地に近づくにつれ、乗車数は多くなる。
身動き取れないというほどではないが、かなり窮屈。
バス停に止まり、ぱらぱらと人が降りてほっとする間もなく、同じくらいかそれ以上の人が乗車していよいよ動けなくなる。
バスがガタン!と揺れれば体のどこかが誰かにぶつかってしまう。
手すりを掴んでどうにか倒れないように踏ん張った。
バスは交差点に差し掛かり、右に大きく車体が傾き乗客もそれに習うように傾いた。

(・・・・・・え?)

そんなおり、ふと感じた違和感。
一瞬触れただけならば、状況が起こした事故だったと思っただろう。
けれど体に触れた感触が、いつまでたっても離れない。
それどころか太股あたりに触れた誰かの手が、明確な意図を持って這い上がってくる。

(痴漢!?)

確認しようにもこの混雑。
まともに自分の足元を見ることすらできない。
けれど確かに触られている。
せめて容疑者の特定だけでも、と視線を巡らせた。
当たり前だけれど、いかにも痴漢然とした人などいない。
距離間などから容疑者候補は三人まで絞れた。
けれどそれ以上はどうしても特定できない。
これじゃあ現行犯で捕まえられない。
思考を巡らしている間も、誰かの手は確実に太股から膝へと下がり、スカートの裾を手繰り上げようとしていた。

(やっ・・・・・・!)

素肌の上を撫で上げられ、嫌悪感と恐怖に体を支配される。
ぞわりとした、まるで背中を虫が這い上がるような感覚。
ここまで来ても悲鳴の一つ上げなかったのは、声も上げられないほど怖かったからではない。

(まだダメ・・・・・・っ!!)

いうなれば、私が警官だから。
現行犯逮捕しなければという、警官としての一種の使命感があったから。
不躾にまさぐる手はこちらが抵抗しないとみると次第に動きをエスカレートさせていく。
体が震えているのが自分でも分かった。
それでも私は声を上げることができない。
せめてバスが止まって人の流れが出来れば・・・・・・。
この手を無理矢理にでも掴みあげることが出来れば・・・・・・。
もしも取り逃がせば容疑者はまた誰かを餌食にするだろう。

(そんなことは許せないっ)

何が何でも捕まえなければ・・・・・・。
心に固く誓って体をまさぐる手に耐えた。
怖くても、気持ち悪くても、相手がボロを出すその一瞬をのがす訳にはいかない。
それでも、こぼれそうになる涙を、こみ上げてくる吐き気を、使命感だけでやり過ごすのはいよいよ限界だった。

「よぉ、おっさん。これなんだか分かるか?」

聞きなれた声に、ハッと意識が明瞭になった。
声のした方に振り返る。
居たのは、見慣れた銀糸。
私の背後に位置していた男に掲げた警察手帳。

「痴漢の現行犯だ。恨むんなら自分の行いを恨みな」

逃げだそうとした男の腕を捻り上げた。
誤解だ、人違いだ、冤罪だ、証拠はあるのか、男はわめき立てる。

「お前が痴漢を働いた相手も警官でね。泣き寝入りはしてくれないだろうよ。なぁ、ココ?」
「・・・・・・ハント・・・・・・先輩・・・・・・?」
「何呆けた顔してるんだ。降りるぞ」
「あ、はい!」

ようやく停車したバス。
先輩は人をかき分けて容疑者を引っ立てていった。
流れに逆らわぬよう、視線の先に揺れる銀糸を見失わぬよう、私も後を追った。


□■□


近くを巡察していた警官に事情を説明して男を引き渡す。
現行犯ということもあり、男も観念して容疑を認めた。
私も掻い摘んで状況報告は済ませたが、後日改めて参考証言を取るかもしれないと忠告されて今日のところは解放された。
容疑者がパトカーに詰め込まれたのを確認して、ようやく人心地が付いた。

「災難だったな?」
「ハント先輩・・・・・・」
「っ、なんて言うと思ったかこのバカっ!!」
「!?いたぁっ!!」

・・・・・・グーで殴られた。

「なんでさっさと声を上げないんだお前は!?バカか?バカなんだろう?バカなんだな!?」
「ひっ、ひどいです先輩!!」
「ひどいもクソもあるか!俺がたまたま乗り合わせていたからいいようなもの、あのままどうするつもりだったんだ!?こんな時に限ってバカ犬も連れてないし、ホント何考えているんだお前は!一人で捕まえるつもりだったのか!?何かあったらどうするつもりだったんだ!」
「だ!だって、現行犯で上げなきゃ逮捕なんて出来ないし・・・・・・」
「それで良いようにされてたって言うのかこのバカっ!捕まえることよりも自分の身を守ることを考えろ!!」
「せんぱっ・・・・・・!」

強い力で引き寄せられ、先輩の胸にポスリと収まった。

「大丈夫か?」
「せん、ぱ・・・・・・ぃ・・・・・・」
「怖かったんだろ?悪かった。助けるのが遅くなっちまって・・・・・・」
「せ・・・・・・ぱぃ・・・・・・っ!」

生々しいまでの感触がリフレイン。
やりこめていた恐怖を抑圧するものがなくなったとたん、腰に力が入らなくなる。

「お!おい!?ココっ!?」

倒れかかった私を、先輩は危なっかしい手つきで支えてくれた。
辛うじて踏ん張ることは出来たけれど、とても大丈夫なんていえる状態ではないのは明白で。
ほとんどの体重を先輩に預ける形になった。

「・・・・・・あんま無茶すんな・・・・・・」
「・・・・・・ハイ・・・・・・」
「次同じようなことしたらゲンコツじゃすまさねーからな。覚悟しとけ」
「はい。・・・・・・先輩が居てくれて良かったです・・・・・・」
「・・・・・・おぅ」

グーで殴った頭を、先輩は優しく撫でてくれた。


□■□


「で?お前はバカ犬も連れないで一人で何してたんだ?」
「あ・・・・・・、と、ちょっと買い物に・・・・・・」
「しゃーねぇ。付き合ってやるよ。俺も非番だしな」

!?これってもしかしてデートのお誘い・・・・・・!!
でもでも、私が買いに行こうとしてたのは・・・・・・。

「一人で大丈夫ですよ!」
「うるせぇ。お前はボケっとしてるから一人にしておくと余計心配なんだよ。いいから行くぞ!」
「せ、せんぱーいっ!」


なんて言っていたのが20分前のこと。


「・・・・・・」
「えっと・・・・・・ここ、何ですけど・・・・・・」
「・・・・・・いやいやいやいやいやいや・・・・・・。マズいだろ、無理だろ、ていうか前にもこんなことあったぞ!?」

恥ずかしい!恥ずかしい!!
でも、ここまで来たんだから私だって頑張らなきゃ!

「ハント先輩はどんな下着が好みなんですかっ!?」
「・・・・・・いやいや、おかしいだろ!?ちったー冷静になれよ!?」
「私、先輩が好きな奴なら頑張って穿きますから!き・・・・・・キワドイ奴でも、先輩が好きっていうのなら頑張りますから!!」
「うっせぇぇっ!!勝手に好きなのはけよぉぉっ!!」
「あ、せんぱぁぁいぃ!待ってくださいよぉぉ!!どれが、どれが先輩の好みなんですかぁ!?せんぱぁぁぃ!!」

初めてのデートは、先輩との追いかけっこになりました。
ちょっと・・・・・・残念。


たまの休みに。



あ~アラココは書いてて楽しいなww
わっふるわっふる。
ココたんかわゆす!
なんか甘あま展開に耐えきれなくって最後にオチを入れてしまった。
自分の未熟っぷりがよく分かります。
※痴漢は犯罪です!絶対してはいけません!!※
2011/02/28

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
さかきこう
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
忍者ブログ [PR]
design by AZZURR0