~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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彼女の家は木造アパートの二階だった。
横付け階段が、一歩足を進めるごとにギシギシ音を立てるような古めかしさ。
いつか踏み抜けるんじゃないかという男の一抹の不安をよそに、彼女は慣れた足取りで進む。
玄関横の郵便受けからいくつか封筒を取り出して差出人を確認してから玄関を開けた。
中は外見の割に小ぎれいな部屋だった。
どうぞと来宅を勧められるよりも早く、
「お風呂は右の扉です」
とだけ彼女は伝えた。
彼女はタオルで濡れた頭を拭いている。
濡れた彼女を差し置いて先に入るべきか、男は逡巡したが、改めて身体を見れば選択肢などなかった。
どう贔屓目に見ても男の方がずぶ濡れで、なおかつ血で汚れている。
そんな状態の知らない人間を部屋に置いて風呂を使うくらいなら、わずかの間寒さを我慢した方がましだと誰でも思う。
「使わせて貰うよ」
出来るだけ床を汚さないようにして歩くくらいの礼儀はしておいた。
扉を開けると狭い脱衣所と小さな洗面台。
隅っこに追いやられた洗濯機が狭いスペースを圧迫している。
手狭な建築に無理矢理押し込んだような印象。
ただ、彼女も見ず知らずの男にそんな指摘はされたくないだろうし、どうでもいいことだったのですぐに思考の外に追いやった。
男は雨と血を存分に吸った衣服に手を伸ばす。
ぴったりと張り付いてしまって気持ちが悪いしとにかく重い。
一枚脱ぐ度に鎧を外したような解放感があった。
濡れた衣服にもたつきながらも、すべて脱いで洗濯機の上にあった脱衣籠に勝手に入れる。
他に置き場がないのだから許されるだろう。
曇ガラスの戸を開けて浴室へ。
想像通り、こちらもやや手狭な作りだ。
最低限のものが最低限度の大きさで備え付けてある。
シャワーのコックを捻っても、優に一分は冷水が出ていたように思う。
ようやく温かくなり始めたのを確認して、頭から被った。
熱湯の様に感じたくらい、身体は冷えきっていた。
熱を知って初めて冷えていたことを悟る。
あのまま後一時間でも外にいたら凍死まではいかなくとも、低体温状態にはなっていたかもしれない。
「タオル、置いておきます」
ガラス戸の向こうから少女の声がした。
そういえば目に付く範囲にタオルがなかったことを思い出す。
今になって思えばなかなかうかつだった。
「うん」
「あと着替えも。着れなかったら裸で我慢してください」
「助かるよ」
タオルどころか着替えのことまで失念していた。
つい数分前までの自分の頭は働いているようで、全く機能していなかったのだと思い知らされた。
少女が気を回してくれなければ男はあの冷たく汚れた衣服を着なければならないところだった。
「何で僕なんかの世話を焼いてるの?」
シャワーを浴びながら、未だガラス戸の向こうに気配を残している少女に問いかけた。
たぶんそれは、ごく当たり前の問いかけだ。
普通、放っておくだろう。
目についても、見えなかったふりをする。
どんな一般人にだって危険な匂いしか感じ取れない。
それくらい怪しい出で立ちだった。
「・・・・・・気まぐれです」
「そう」
ほんの少しだけ、言葉に迷いがみられたのを感じた。
もっと別の意図があるかのような含み。
けれど少女は言葉にしようとはしなかった。
男も、わざわざ問いつめて聞き出そうとはしなかった。
「質問はそれだけですか?」
「あるけど、今はやめておくよ」
「そうですか」
少女の気配は先の扉の向こうに消えてしまった。
熱いシャワーが体を叩く。
気づけばもう十分に体は温まったようだった。
コックを捻る。
「・・・・・・変な子」
言葉は誰に聞かれることもなく排水溝に消えていった。
□■□
用意されていた服は驚くほどサイズが合っていた。
けれど、少女の服とは思えないサイズ。
「誰の?」
「私の師匠、父親代わりの人の服です」
考えてみれば見たところ中学生かそこらの少女が一人で暮らしているとは思えない。
保護者がいるのは当たり前だ。
ただ何となく、少女はそういうものとは無縁の存在に見えた。
世界の外で生きているような。
外から内を見ているような。
一本線の外側にいる存在である気がした。
だから、少女の答えに面食らった。
「なんですか?保護者がいたらおかしいですか?」
「いや」
「・・・・・・変な人」
わずか数分前に男が呟いた言葉を少女も口にした。
それが、お互いの認識だった。
少女は自分の着替えを持って風呂場へ行ってしまった。
必然的に取り残される男。
茶の間らしき部屋はあまりにも物が無く、生活感がなかった。
まるで少女そのもののように、一般から画した異質な物のように感じた。
有り余るスペースに彼女という存在をプラスする。
それは恐ろしく似合いすぎて。
ここは彼女の居場所なのだと、本能が理解した。
話が・・・・・・見えないですよね?
すんません。試行錯誤中です。
てか、今回もヒの字もイの字も出てきませんね。
こんなんですが間違いなくヒバピンです。
早くお互いの名前を聞けお前ら!
2011/01/21
横付け階段が、一歩足を進めるごとにギシギシ音を立てるような古めかしさ。
いつか踏み抜けるんじゃないかという男の一抹の不安をよそに、彼女は慣れた足取りで進む。
玄関横の郵便受けからいくつか封筒を取り出して差出人を確認してから玄関を開けた。
中は外見の割に小ぎれいな部屋だった。
どうぞと来宅を勧められるよりも早く、
「お風呂は右の扉です」
とだけ彼女は伝えた。
彼女はタオルで濡れた頭を拭いている。
濡れた彼女を差し置いて先に入るべきか、男は逡巡したが、改めて身体を見れば選択肢などなかった。
どう贔屓目に見ても男の方がずぶ濡れで、なおかつ血で汚れている。
そんな状態の知らない人間を部屋に置いて風呂を使うくらいなら、わずかの間寒さを我慢した方がましだと誰でも思う。
「使わせて貰うよ」
出来るだけ床を汚さないようにして歩くくらいの礼儀はしておいた。
扉を開けると狭い脱衣所と小さな洗面台。
隅っこに追いやられた洗濯機が狭いスペースを圧迫している。
手狭な建築に無理矢理押し込んだような印象。
ただ、彼女も見ず知らずの男にそんな指摘はされたくないだろうし、どうでもいいことだったのですぐに思考の外に追いやった。
男は雨と血を存分に吸った衣服に手を伸ばす。
ぴったりと張り付いてしまって気持ちが悪いしとにかく重い。
一枚脱ぐ度に鎧を外したような解放感があった。
濡れた衣服にもたつきながらも、すべて脱いで洗濯機の上にあった脱衣籠に勝手に入れる。
他に置き場がないのだから許されるだろう。
曇ガラスの戸を開けて浴室へ。
想像通り、こちらもやや手狭な作りだ。
最低限のものが最低限度の大きさで備え付けてある。
シャワーのコックを捻っても、優に一分は冷水が出ていたように思う。
ようやく温かくなり始めたのを確認して、頭から被った。
熱湯の様に感じたくらい、身体は冷えきっていた。
熱を知って初めて冷えていたことを悟る。
あのまま後一時間でも外にいたら凍死まではいかなくとも、低体温状態にはなっていたかもしれない。
「タオル、置いておきます」
ガラス戸の向こうから少女の声がした。
そういえば目に付く範囲にタオルがなかったことを思い出す。
今になって思えばなかなかうかつだった。
「うん」
「あと着替えも。着れなかったら裸で我慢してください」
「助かるよ」
タオルどころか着替えのことまで失念していた。
つい数分前までの自分の頭は働いているようで、全く機能していなかったのだと思い知らされた。
少女が気を回してくれなければ男はあの冷たく汚れた衣服を着なければならないところだった。
「何で僕なんかの世話を焼いてるの?」
シャワーを浴びながら、未だガラス戸の向こうに気配を残している少女に問いかけた。
たぶんそれは、ごく当たり前の問いかけだ。
普通、放っておくだろう。
目についても、見えなかったふりをする。
どんな一般人にだって危険な匂いしか感じ取れない。
それくらい怪しい出で立ちだった。
「・・・・・・気まぐれです」
「そう」
ほんの少しだけ、言葉に迷いがみられたのを感じた。
もっと別の意図があるかのような含み。
けれど少女は言葉にしようとはしなかった。
男も、わざわざ問いつめて聞き出そうとはしなかった。
「質問はそれだけですか?」
「あるけど、今はやめておくよ」
「そうですか」
少女の気配は先の扉の向こうに消えてしまった。
熱いシャワーが体を叩く。
気づけばもう十分に体は温まったようだった。
コックを捻る。
「・・・・・・変な子」
言葉は誰に聞かれることもなく排水溝に消えていった。
□■□
用意されていた服は驚くほどサイズが合っていた。
けれど、少女の服とは思えないサイズ。
「誰の?」
「私の師匠、父親代わりの人の服です」
考えてみれば見たところ中学生かそこらの少女が一人で暮らしているとは思えない。
保護者がいるのは当たり前だ。
ただ何となく、少女はそういうものとは無縁の存在に見えた。
世界の外で生きているような。
外から内を見ているような。
一本線の外側にいる存在である気がした。
だから、少女の答えに面食らった。
「なんですか?保護者がいたらおかしいですか?」
「いや」
「・・・・・・変な人」
わずか数分前に男が呟いた言葉を少女も口にした。
それが、お互いの認識だった。
少女は自分の着替えを持って風呂場へ行ってしまった。
必然的に取り残される男。
茶の間らしき部屋はあまりにも物が無く、生活感がなかった。
まるで少女そのもののように、一般から画した異質な物のように感じた。
有り余るスペースに彼女という存在をプラスする。
それは恐ろしく似合いすぎて。
ここは彼女の居場所なのだと、本能が理解した。
話が・・・・・・見えないですよね?
すんません。試行錯誤中です。
てか、今回もヒの字もイの字も出てきませんね。
こんなんですが間違いなくヒバピンです。
早くお互いの名前を聞けお前ら!
2011/01/21
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