~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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バキバキと痛む関節をさすりながら身体を捩った。
日の光を避けて寝床を確保したつもりだったけれど、わずかに差し込んだ西日が今の僕にとっては炎天下の中にさらされているように感じられたのだ。
あまりのまぶしさに毛布を頭から被って少しでも暗がりになるようにあがいてみたが、どうにもならなかった。
純化作用によって敏感になった僕の感覚の前では、毛布一枚くらいの脆弱な隔たりなど何の意味も持たないものだった。
あきらめて身体を起き上がらせる。
体中痛いところだらけだ。
だからといって命に別状は無いのだから我慢するしかない、とクレプスリーは言った。
確かにその通りである。
だが、いわゆる成長痛というもののせいだとわかっていても、痛いものは痛いのだ。
我慢しろといわれてもいつまで続くとも知れない痛みと戦うのはなかなか骨が折れる。
特に痛みがきつい膝や足首に視線を落としてさすってやると、ばさりと何かが視界を覆う。
「うはぁ・・・・・・また伸びてきちゃった・・・・・」
何度目になるかわからない溜め息を吐いて、のろのろとバックからはさみを取り出す。
純化作用で伸びるのは何も身長だけではない。
髪の毛やら髭やらもやたらめったら伸びるのだ。
純化4週目にしてようやく髭は落ち着いてきたけれど、髪の毛の方はまだまだ留まることを知らない様子でいい加減溜め息も出尽くしてしまいそうだ。
どうせすぐに伸びることはわかっていたから無造作に一束掴んでばっさりと切り落とした。
続けて何度か繰り返せば、ようやく視界が開ける。
襟首の方はこの際放っておくことにする。
紐か何かでくくって置く方が面倒が無いと学んだのだ。
ざっくばらんに切りそろえた前髪を鏡で確認しているとようやくクレプスリーが起き出してきた。
切り落とした髪の毛を片付けている僕を一瞥して「またか」と零す。
しょうがないじゃないか。
僕だって伸ばしたくて伸ばしているんじゃないんだから。
「純化が始まった頃に比べれば大分マシな頻度にはなったではないか」
まるで心でも読んだかのタイミングでクレプスリーがそんなことを言う。
「そうだけどさ・・・・・・」
「もうすぐ純化が始まって5週になる。時期に終わるからそれまでの辛抱だ」
「・・・・・その台詞、2週間前にも聞いたんだけど・・・・・・」
「仕方なかろう。純化がどれだけの期間続くかは予想がつかん。3日で終わるものもいれば2ヶ月掛かるものもいる。終わるまではわからんのだ」
「他人事だと思って・・・・・・」
「事実だから仕方なかろう。一生続くわけじゃないんだ。必ず終わりが来る。それも事実だ」
「はぁ・・・・・・・」
僕は数えるのも億劫になった溜め息を今一度漏らした。
「だが本当に終わりは近いと思うぞ。髪の伸びるペースも少し遅くなって来たしな」
「そうだといいけど。ま、期待しないでおくよ」
「何を楽観視しておる。これからも大変だぞ?」
「?なんで?」
この体中の痛みから解放されて、飽きもせずに伸び続ける髪の毛との格闘もしなくて済むんだろう?
それのどこに心配があるというのか。
「わからんのか?」
「うん」
皆目見当もつかなかった。
「その髪の毛だ」
「髪?」
「お前、今純化が終わったらそのザンバラ頭で過ごすことになるんだぞ」
「あ・・・・・」
そういわれてみればその通りだ。
『またすぐに伸びるから適当でいいや』と短く短く切りそろえてしまった前髪に手を伸ばす。
それも髪形の考慮なんて何も無くバツンとはさみを横一文字に入れているだけなのだ。
確かに、今純化が終わってしまったらいろいろと問題だった。
「どうするつもりなんだ?バンパイアマウンテンにいた頃のように頭を丸めるなら特に問題は無いが・・・・」
「やだよっ!折角髪の毛が生えたんだから伸ばすっっ!!」
「我輩のように短くそろえてしまえば楽だぞ?」
クレプスリーは自分の髪の毛を撫で付けて見せた。
冗談かと思って「そうだね」なんて軽く返してやったら意外にも本気だったようで「そうかそうか!」と嬉しそうに笑うではないか!
あまつさえ「では早速そろえてやろう」なんていって指をぽきぽき鳴らす始末。
っ、冗談じゃない!!
なんで僕がそんな髪にならなくっちゃならないんだよ!
僕の頭に爪を伸ばしてきたクレプスリーの手を振り払って、思いっきり叫んでやった。
「誰がそんな恥ずかしい髪形になるかよ!?そんな髪になるくらいなら死んだ方がマシっ!!」
それから数日してようやく純化はおさまった。
髪型は僕が髪の毛を失う前のものとほとんど変わらないものに落ち着いた。
だけど。
心なしかクレプスリーは意気消沈しているようだった。
かみのけ
(あんたとおそろい!?それだけは勘弁してっ!!)
純化中の一コマ。
クレプスリーは本当は弟子とおそろいになりたかったんだよ。
思いが通じないのはいつものことだけどね。
2010/07/11
日の光を避けて寝床を確保したつもりだったけれど、わずかに差し込んだ西日が今の僕にとっては炎天下の中にさらされているように感じられたのだ。
あまりのまぶしさに毛布を頭から被って少しでも暗がりになるようにあがいてみたが、どうにもならなかった。
純化作用によって敏感になった僕の感覚の前では、毛布一枚くらいの脆弱な隔たりなど何の意味も持たないものだった。
あきらめて身体を起き上がらせる。
体中痛いところだらけだ。
だからといって命に別状は無いのだから我慢するしかない、とクレプスリーは言った。
確かにその通りである。
だが、いわゆる成長痛というもののせいだとわかっていても、痛いものは痛いのだ。
我慢しろといわれてもいつまで続くとも知れない痛みと戦うのはなかなか骨が折れる。
特に痛みがきつい膝や足首に視線を落としてさすってやると、ばさりと何かが視界を覆う。
「うはぁ・・・・・・また伸びてきちゃった・・・・・」
何度目になるかわからない溜め息を吐いて、のろのろとバックからはさみを取り出す。
純化作用で伸びるのは何も身長だけではない。
髪の毛やら髭やらもやたらめったら伸びるのだ。
純化4週目にしてようやく髭は落ち着いてきたけれど、髪の毛の方はまだまだ留まることを知らない様子でいい加減溜め息も出尽くしてしまいそうだ。
どうせすぐに伸びることはわかっていたから無造作に一束掴んでばっさりと切り落とした。
続けて何度か繰り返せば、ようやく視界が開ける。
襟首の方はこの際放っておくことにする。
紐か何かでくくって置く方が面倒が無いと学んだのだ。
ざっくばらんに切りそろえた前髪を鏡で確認しているとようやくクレプスリーが起き出してきた。
切り落とした髪の毛を片付けている僕を一瞥して「またか」と零す。
しょうがないじゃないか。
僕だって伸ばしたくて伸ばしているんじゃないんだから。
「純化が始まった頃に比べれば大分マシな頻度にはなったではないか」
まるで心でも読んだかのタイミングでクレプスリーがそんなことを言う。
「そうだけどさ・・・・・・」
「もうすぐ純化が始まって5週になる。時期に終わるからそれまでの辛抱だ」
「・・・・・その台詞、2週間前にも聞いたんだけど・・・・・・」
「仕方なかろう。純化がどれだけの期間続くかは予想がつかん。3日で終わるものもいれば2ヶ月掛かるものもいる。終わるまではわからんのだ」
「他人事だと思って・・・・・・」
「事実だから仕方なかろう。一生続くわけじゃないんだ。必ず終わりが来る。それも事実だ」
「はぁ・・・・・・・」
僕は数えるのも億劫になった溜め息を今一度漏らした。
「だが本当に終わりは近いと思うぞ。髪の伸びるペースも少し遅くなって来たしな」
「そうだといいけど。ま、期待しないでおくよ」
「何を楽観視しておる。これからも大変だぞ?」
「?なんで?」
この体中の痛みから解放されて、飽きもせずに伸び続ける髪の毛との格闘もしなくて済むんだろう?
それのどこに心配があるというのか。
「わからんのか?」
「うん」
皆目見当もつかなかった。
「その髪の毛だ」
「髪?」
「お前、今純化が終わったらそのザンバラ頭で過ごすことになるんだぞ」
「あ・・・・・」
そういわれてみればその通りだ。
『またすぐに伸びるから適当でいいや』と短く短く切りそろえてしまった前髪に手を伸ばす。
それも髪形の考慮なんて何も無くバツンとはさみを横一文字に入れているだけなのだ。
確かに、今純化が終わってしまったらいろいろと問題だった。
「どうするつもりなんだ?バンパイアマウンテンにいた頃のように頭を丸めるなら特に問題は無いが・・・・」
「やだよっ!折角髪の毛が生えたんだから伸ばすっっ!!」
「我輩のように短くそろえてしまえば楽だぞ?」
クレプスリーは自分の髪の毛を撫で付けて見せた。
冗談かと思って「そうだね」なんて軽く返してやったら意外にも本気だったようで「そうかそうか!」と嬉しそうに笑うではないか!
あまつさえ「では早速そろえてやろう」なんていって指をぽきぽき鳴らす始末。
っ、冗談じゃない!!
なんで僕がそんな髪にならなくっちゃならないんだよ!
僕の頭に爪を伸ばしてきたクレプスリーの手を振り払って、思いっきり叫んでやった。
「誰がそんな恥ずかしい髪形になるかよ!?そんな髪になるくらいなら死んだ方がマシっ!!」
それから数日してようやく純化はおさまった。
髪型は僕が髪の毛を失う前のものとほとんど変わらないものに落ち着いた。
だけど。
心なしかクレプスリーは意気消沈しているようだった。
かみのけ
(あんたとおそろい!?それだけは勘弁してっ!!)
純化中の一コマ。
クレプスリーは本当は弟子とおそろいになりたかったんだよ。
思いが通じないのはいつものことだけどね。
2010/07/11
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珍しくクレプスリーが熟睡していた。
「夜だよ」
揺ってみたけど起きる気配が無かった。
いつもよりも眠りが深いところにあるようだ。
「早く起きないとご飯食べちゃうよ!」
少し脅してみるけどやっぱり反応が無い。
少し「うーん・・・」と身を捩る程度だ。
「起きないの?」
返事の代わりにクレプスリーがもごもごと何かを口にした。
良く聞き取れなかったので口元に耳を寄せてみる。
「・・・・・エラ・・・・・・」
それは僕も良く知る女性の名前だった。
クレプスリーのかつての連れ合い、すなわち奥さんだった人の名前。
黒髪が綺麗で気高い人だ。
しかし―――
「何でエラ?」
どうしてこのタイミングで彼女の名前が出るのだろうか。
もしかしてエラの夢でも見ているのか?
「あんたは今どこにいるのさ?」
問いには答えず、クレプスリーは次々と名前を口にしていった。
「・・・・・ガブナー・・・・カーダ・・・・・バネス・・・・・・・」
バンパイアマウンテンにいたときの面子だ。
「シーバー・・・・・・パリス元帥・・・・・・」
少しだけ畏まった様子でその名を呟いた。
一体どうしてしまったのか?
この人は夢の中でバンパイアマウンテンに舞い戻っているのだろうか?
なんて思っていると
「・・・・・エブラ・・・・・トラスカ・・・・・」
今度はシルク・ド・フリークのメンバーの名前を上げていく。
良く知った名前もあれば、僕が知らない名前もあった。
僕がシルク・ド・フリークに合流する前のメンバーなのかもしれない。
それから何度声を掛けてもクレプスリーは起きる気配がなかった。
少しの間を空けて次々と出てくる名前をベットの端に腰掛けながらそれを聞き続ける。
ミスタートールの名前やエバンナの名前も上がった。
最終的にはタイニーの名前すら出てきた。
でも、僕の名前は最後の最後まで一度だって出てくることは無かった。
それからクレプスリーが起きたのは30分ほどしてからだった。
「・・・・・・・やっと起きた?」
「・・・・・なんで不機嫌なのだ?」
「別に!あんたがさっさと起きてくれないから疲れただけだよっ!」
あれだけの名前が出ておきながら、僕を呼んでくれなかったことに苛立っているわけじゃない。
断じて違う!
「・・・・疲れた・・・・」
起き上がって早々、クレプスリーは盛大な溜め息を吐いた。
それを見て僕は余計に苛立ちが胸の中に広がった。
「あんだけ寝坊しておいてよく言う」
思わず語調がきつくなったが、訂正する気にもなれなかった。
「お前のせいだ。お前の」
「は?」
いきなり名前を上げられて変な声が出た。
なんでそこで僕のせいなんだよ。
言いがかりにもほどがある。
「意味わかんない」
「お前が勝手にいなくなるから我輩はあちこち探し回る羽目になったんだ」
「何の・・・・・・」
と、声を上げてふと思い至る。
「僕を・・・・・探していたの・・・・?夢の中で?」
「そうだ」
「バンパイアマウンテンや、シルク・ド・フリークを回って?最終的にはタイニーのところにまで足を向けて?」
「そうだ・・・・・・って、何で知っている?」
不思議そうにこちらを見やる。
なんでって、そりゃぁあれだけ言っていたらね。
でも本人は名前を呟いていたことに当たり前だけど気づいていないようだった。
「何でだろうね!」
とたんに胸の中の煤けた気持ちが洗い流された。
ちょっとだけいい気分だ。
寝言
(しょうがないから許してあげてもいいよ?)
「夜だよ」
揺ってみたけど起きる気配が無かった。
いつもよりも眠りが深いところにあるようだ。
「早く起きないとご飯食べちゃうよ!」
少し脅してみるけどやっぱり反応が無い。
少し「うーん・・・」と身を捩る程度だ。
「起きないの?」
返事の代わりにクレプスリーがもごもごと何かを口にした。
良く聞き取れなかったので口元に耳を寄せてみる。
「・・・・・エラ・・・・・・」
それは僕も良く知る女性の名前だった。
クレプスリーのかつての連れ合い、すなわち奥さんだった人の名前。
黒髪が綺麗で気高い人だ。
しかし―――
「何でエラ?」
どうしてこのタイミングで彼女の名前が出るのだろうか。
もしかしてエラの夢でも見ているのか?
「あんたは今どこにいるのさ?」
問いには答えず、クレプスリーは次々と名前を口にしていった。
「・・・・・ガブナー・・・・カーダ・・・・・バネス・・・・・・・」
バンパイアマウンテンにいたときの面子だ。
「シーバー・・・・・・パリス元帥・・・・・・」
少しだけ畏まった様子でその名を呟いた。
一体どうしてしまったのか?
この人は夢の中でバンパイアマウンテンに舞い戻っているのだろうか?
なんて思っていると
「・・・・・エブラ・・・・・トラスカ・・・・・」
今度はシルク・ド・フリークのメンバーの名前を上げていく。
良く知った名前もあれば、僕が知らない名前もあった。
僕がシルク・ド・フリークに合流する前のメンバーなのかもしれない。
それから何度声を掛けてもクレプスリーは起きる気配がなかった。
少しの間を空けて次々と出てくる名前をベットの端に腰掛けながらそれを聞き続ける。
ミスタートールの名前やエバンナの名前も上がった。
最終的にはタイニーの名前すら出てきた。
でも、僕の名前は最後の最後まで一度だって出てくることは無かった。
それからクレプスリーが起きたのは30分ほどしてからだった。
「・・・・・・・やっと起きた?」
「・・・・・なんで不機嫌なのだ?」
「別に!あんたがさっさと起きてくれないから疲れただけだよっ!」
あれだけの名前が出ておきながら、僕を呼んでくれなかったことに苛立っているわけじゃない。
断じて違う!
「・・・・疲れた・・・・」
起き上がって早々、クレプスリーは盛大な溜め息を吐いた。
それを見て僕は余計に苛立ちが胸の中に広がった。
「あんだけ寝坊しておいてよく言う」
思わず語調がきつくなったが、訂正する気にもなれなかった。
「お前のせいだ。お前の」
「は?」
いきなり名前を上げられて変な声が出た。
なんでそこで僕のせいなんだよ。
言いがかりにもほどがある。
「意味わかんない」
「お前が勝手にいなくなるから我輩はあちこち探し回る羽目になったんだ」
「何の・・・・・・」
と、声を上げてふと思い至る。
「僕を・・・・・探していたの・・・・?夢の中で?」
「そうだ」
「バンパイアマウンテンや、シルク・ド・フリークを回って?最終的にはタイニーのところにまで足を向けて?」
「そうだ・・・・・・って、何で知っている?」
不思議そうにこちらを見やる。
なんでって、そりゃぁあれだけ言っていたらね。
でも本人は名前を呟いていたことに当たり前だけど気づいていないようだった。
「何でだろうね!」
とたんに胸の中の煤けた気持ちが洗い流された。
ちょっとだけいい気分だ。
寝言
(しょうがないから許してあげてもいいよ?)
どの時期の話なのか?時間軸がわからない。
適当に妄想していただけると助かります。
しかしクレプスリーは夢の中でもパパをしている。
いつだってダレンが心配なんですねわかります。
2010/07/10
適当に妄想していただけると助かります。
しかしクレプスリーは夢の中でもパパをしている。
いつだってダレンが心配なんですねわかります。
2010/07/10
言葉にしなければ伝わらないことというのは、存外多い。
近親者への感謝というものはそれの最たるものと言っても良いくらいだ。
暗黙の了解に頼り続ければいつかしっぺ返しを食らうぞ!と言ったのは誰だったか?
もしかしたらそんなことを言った人はいないかもしれない。
それでも大抵の人は痛感している事実だ。
自身が伝わっていると思っていることの半分も他者には伝わらない。
それどころか勝手な曲解をされていることだって多い。
だから大切なことは言葉にする。
単純にして明解な答え。
簡単なようで、それはとてつもなくハードルの高いものでもあった。
ハードルを上げているのは己のプライドだとかそんなもの。
自分で自分を苦しめている。
僕はそんなマゾヒストなわけじゃないのに、どうして自分を追い詰めなくてはならないのだろう。
まったくもって不可思議な精神構造だ。
そんな風に創った神様とかいうのをぶん殴ってやりたくなる。
素直になればいい。
思っていることをそのまま吐き出せばいい。
『ありがとう』と
『感謝している』と
たったその一言でいい。
恥ずかしがることなんて無い。
単語を口にするだけ。
それだけでいいんだ。
「あの・・・・・・さ、クレプスリー・・・・・・」
つ、と前を歩くクレプスリーのマントを引く。
控えめに少しだけつまんで引き止める。
「・・・・・・・なんだ?」
「えっと・・・・・・その・・・・・・」
さぁどうしたダレン・シャン!?
こんなところで怖気づくな!
たった一言を言うだけだ。
何をためらうことがある。
素直な気持ちを素直に吐き出せ!
「いつも・・・・・迷惑掛けて・・・・ごめん・・・・・。見捨てないでくれて、ありがと・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
やっとの思いで搾り出した言葉だというのに、クレプスリーは目を見開いて身体を硬直させてしまう。
「何だよ・・・・どうかしたの?」
「いや・・・・・」
歯切れ悪くもごもご。
視線を外して明後日の方を見やって、ぽつり。
「明日は台風か・・・・・?」
それも冗談めかしてなんかじゃなく、真剣な表情そのものでそんなことを言う。
せっかく!
折角僕が普段言えていない事をちゃんと伝えてあげようと頑張ったのになんて仕打ちだ!
人の感謝は素直に受け入れろってママに習わなかったのかこのハゲ親父っ!!
「それとも・・・・・・まさかまた何か粗相をしたのではあるまいな?」
至極真剣にクレプスリーは問うてきた。
何でそうなるんだよっ!
ただ、純粋な気持ちで「ありがとう」を伝えただけなのに!
何であんたは疑うことしかしないんだ!
このバカっ!
あんぽんたんっ!
ウスラトンカチっ!
「さぁ、怒らないから素直に言ってみろ。何をした?」
だから!さっきから素直に言っているじゃないかっ!!
「・・・っ!あんたのことなんか知るもんかっっ!!」
もう絶対あんたには言ってやらないから!
ばかばかばかっ!
嫌いだ!
(嫌い嫌い大嫌い!―――嘘、ホントは大好き)
近親者への感謝というものはそれの最たるものと言っても良いくらいだ。
暗黙の了解に頼り続ければいつかしっぺ返しを食らうぞ!と言ったのは誰だったか?
もしかしたらそんなことを言った人はいないかもしれない。
それでも大抵の人は痛感している事実だ。
自身が伝わっていると思っていることの半分も他者には伝わらない。
それどころか勝手な曲解をされていることだって多い。
だから大切なことは言葉にする。
単純にして明解な答え。
簡単なようで、それはとてつもなくハードルの高いものでもあった。
ハードルを上げているのは己のプライドだとかそんなもの。
自分で自分を苦しめている。
僕はそんなマゾヒストなわけじゃないのに、どうして自分を追い詰めなくてはならないのだろう。
まったくもって不可思議な精神構造だ。
そんな風に創った神様とかいうのをぶん殴ってやりたくなる。
素直になればいい。
思っていることをそのまま吐き出せばいい。
『ありがとう』と
『感謝している』と
たったその一言でいい。
恥ずかしがることなんて無い。
単語を口にするだけ。
それだけでいいんだ。
「あの・・・・・・さ、クレプスリー・・・・・・」
つ、と前を歩くクレプスリーのマントを引く。
控えめに少しだけつまんで引き止める。
「・・・・・・・なんだ?」
「えっと・・・・・・その・・・・・・」
さぁどうしたダレン・シャン!?
こんなところで怖気づくな!
たった一言を言うだけだ。
何をためらうことがある。
素直な気持ちを素直に吐き出せ!
「いつも・・・・・迷惑掛けて・・・・ごめん・・・・・。見捨てないでくれて、ありがと・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
やっとの思いで搾り出した言葉だというのに、クレプスリーは目を見開いて身体を硬直させてしまう。
「何だよ・・・・どうかしたの?」
「いや・・・・・」
歯切れ悪くもごもご。
視線を外して明後日の方を見やって、ぽつり。
「明日は台風か・・・・・?」
それも冗談めかしてなんかじゃなく、真剣な表情そのものでそんなことを言う。
せっかく!
折角僕が普段言えていない事をちゃんと伝えてあげようと頑張ったのになんて仕打ちだ!
人の感謝は素直に受け入れろってママに習わなかったのかこのハゲ親父っ!!
「それとも・・・・・・まさかまた何か粗相をしたのではあるまいな?」
至極真剣にクレプスリーは問うてきた。
何でそうなるんだよっ!
ただ、純粋な気持ちで「ありがとう」を伝えただけなのに!
何であんたは疑うことしかしないんだ!
このバカっ!
あんぽんたんっ!
ウスラトンカチっ!
「さぁ、怒らないから素直に言ってみろ。何をした?」
だから!さっきから素直に言っているじゃないかっ!!
「・・・っ!あんたのことなんか知るもんかっっ!!」
もう絶対あんたには言ってやらないから!
ばかばかばかっ!
嫌いだ!
(嫌い嫌い大嫌い!―――嘘、ホントは大好き)
たまには素直になろうと思ったのに上手くいかずに空回りのダレン。
普段のツケが溜まっていたんですね。
時たま思い出したように素直になると、まるで狼少年のような扱い。
でもホントはクレプスリーはわかっていたりする。
あしらったのはクレプスリーなりのジョークとかユーモアとか照れ隠しのつもりだったんだよ。
完全駄々すべりの空回りだけどな!
2010/07/09
普段のツケが溜まっていたんですね。
時たま思い出したように素直になると、まるで狼少年のような扱い。
でもホントはクレプスリーはわかっていたりする。
あしらったのはクレプスリーなりのジョークとかユーモアとか照れ隠しのつもりだったんだよ。
完全駄々すべりの空回りだけどな!
2010/07/09
二人肩を並べて街を歩く。
いや、僕の方が半歩位後ろを歩いていた。
あんたの視界に入るか入らないかのぎりぎりのところを着いて歩く。
「なにやら今日は人が多いな」
「そうだね」
「何かあるのかな?」
「そうかもしれんな」
「我輩たちには関係のないことだがな」
「確かに」
ポツリポツリとした会話。
どれも長くは続かない。
一言言ってはニ三で終わる。
たまに、クレプスリーがちらりとこちらを振り返る。
そして何を言うでもなくまた視線を前に戻して足を進める。
その繰り返しだった。
「・・・・・何・・・・?」
「なんでもない」
「じゃあなんで何回も振り返るんだよ」
「なんでもないと言っているだろうが」
「なんでもないなら振り返るなよ」
「そうはいかん」
「なんで?」
「・・・・・・・なんでもだ」
やっぱり押し黙ってクレプスリーは足を進めた。
問い詰めようとも思ったけれど、それに何の意味があるのかが見出せずに閉口する。
すっかり日の暮れた街を街灯が照らす。
それなりに大きい街なので夜といえども昼間と同じくらい煌々と光輝く。
ふと視線を横に向けると、ショーウインドウにへばりついて玩具をねだる親子の姿を見た。
なんとも微笑ましい、僕にもあった当たり前の光景。
玩具をねだる子供と。
それを置いて帰ろうとする大人と。
諦め切れない思いと、置いていかれる焦燥感に板ばさみになってとうとう泣き出してしまう子供と。
置いて足を進める割に、やっぱり放って置くこともできなくてちらちらと肩越しに様子を伺う大人と。
どこにでもある、当たり前の光景。
その当たり前の光景に僕は思わず釘付けになった。
歩いていたはずの足はいつの間にか止まる。
あの子供はどうするだろうか?
あの大人はどうするだろうか?
玩具をあきらめて大人のもとに駆け込むだろうか。
置いていくことをあきらめて子供のもとに舞い戻るだろうか。
僕ならどうするだろう?
僕ならどうしただろう?
彼なら―――
「ダレン」
少し先から名前を呼ばれた。
声も無くそちらに向き直る。
「・・・・・・・・・・」
「どうかしたのか?」
「・・・・・・ううん。なんでもない」
小走りに彼のところまで駆けた。
クレプスリーは不思議そうに首を傾げていたが「ちょっと昔を思い出しただけ」と告げると「そうか」と短く返した。
それ以上は何も聞いてはこなかった。
代わりにちらちらとこちらを伺っただけだった。
やっぱり会話は長くは続かない。
長いのか短いのかもわからない沈黙の中、僕たちは歩みを進める。
「クレプスリー」
小さな声で彼を呼ぶ。
「なんだ?」
短く彼が返す。
「手、繋ごう」
「は?」
差し出した手に返ってきたのは、間抜けな声。
「こう人が多いとあんたが迷子になるかもしれないからね」
「勝手にはぐれるのはお前の得意技だろうが」
「あんたが勝手にどこかに行っちゃうんだよ」
少し後ろに並べていた足を気持ち早め、勝手に手を拝借。
「ん。これで大丈夫」
「迷子にならなくて済むな?ダレン君や」
「あんたが、ね」
「減らず口を叩きおって」
「ま、心配事が一つは減ったでしょう?」
「・・・・・・まぁ、な」
あんたは僕を置いていったりなんかしない。
絶対、絶対に。
そして僕も、あんたに置いていかれたりしない。
絶対、絶対に。
握った手にぎゅっと力をこめると、同じだけの力できゅっと握り返された。
手と手
(繋いだのは、心だったと信じてる)
いや、僕の方が半歩位後ろを歩いていた。
あんたの視界に入るか入らないかのぎりぎりのところを着いて歩く。
「なにやら今日は人が多いな」
「そうだね」
「何かあるのかな?」
「そうかもしれんな」
「我輩たちには関係のないことだがな」
「確かに」
ポツリポツリとした会話。
どれも長くは続かない。
一言言ってはニ三で終わる。
たまに、クレプスリーがちらりとこちらを振り返る。
そして何を言うでもなくまた視線を前に戻して足を進める。
その繰り返しだった。
「・・・・・何・・・・?」
「なんでもない」
「じゃあなんで何回も振り返るんだよ」
「なんでもないと言っているだろうが」
「なんでもないなら振り返るなよ」
「そうはいかん」
「なんで?」
「・・・・・・・なんでもだ」
やっぱり押し黙ってクレプスリーは足を進めた。
問い詰めようとも思ったけれど、それに何の意味があるのかが見出せずに閉口する。
すっかり日の暮れた街を街灯が照らす。
それなりに大きい街なので夜といえども昼間と同じくらい煌々と光輝く。
ふと視線を横に向けると、ショーウインドウにへばりついて玩具をねだる親子の姿を見た。
なんとも微笑ましい、僕にもあった当たり前の光景。
玩具をねだる子供と。
それを置いて帰ろうとする大人と。
諦め切れない思いと、置いていかれる焦燥感に板ばさみになってとうとう泣き出してしまう子供と。
置いて足を進める割に、やっぱり放って置くこともできなくてちらちらと肩越しに様子を伺う大人と。
どこにでもある、当たり前の光景。
その当たり前の光景に僕は思わず釘付けになった。
歩いていたはずの足はいつの間にか止まる。
あの子供はどうするだろうか?
あの大人はどうするだろうか?
玩具をあきらめて大人のもとに駆け込むだろうか。
置いていくことをあきらめて子供のもとに舞い戻るだろうか。
僕ならどうするだろう?
僕ならどうしただろう?
彼なら―――
「ダレン」
少し先から名前を呼ばれた。
声も無くそちらに向き直る。
「・・・・・・・・・・」
「どうかしたのか?」
「・・・・・・ううん。なんでもない」
小走りに彼のところまで駆けた。
クレプスリーは不思議そうに首を傾げていたが「ちょっと昔を思い出しただけ」と告げると「そうか」と短く返した。
それ以上は何も聞いてはこなかった。
代わりにちらちらとこちらを伺っただけだった。
やっぱり会話は長くは続かない。
長いのか短いのかもわからない沈黙の中、僕たちは歩みを進める。
「クレプスリー」
小さな声で彼を呼ぶ。
「なんだ?」
短く彼が返す。
「手、繋ごう」
「は?」
差し出した手に返ってきたのは、間抜けな声。
「こう人が多いとあんたが迷子になるかもしれないからね」
「勝手にはぐれるのはお前の得意技だろうが」
「あんたが勝手にどこかに行っちゃうんだよ」
少し後ろに並べていた足を気持ち早め、勝手に手を拝借。
「ん。これで大丈夫」
「迷子にならなくて済むな?ダレン君や」
「あんたが、ね」
「減らず口を叩きおって」
「ま、心配事が一つは減ったでしょう?」
「・・・・・・まぁ、な」
あんたは僕を置いていったりなんかしない。
絶対、絶対に。
そして僕も、あんたに置いていかれたりしない。
絶対、絶対に。
握った手にぎゅっと力をこめると、同じだけの力できゅっと握り返された。
手と手
(繋いだのは、心だったと信じてる)
クレプスリーは心配性。
ダレンが視界に入らなくなるととたんに心配になって振り返ってしまいます。
だったら初めっから手を繋いで歩けばよかったのにね!
まぁダレンはそういうことにきちんと気がつける子で、行動に移せる子。
赤師弟親子のバランスはきっとこんな感じで成り立っている。はず。
ダレンが視界に入らなくなるととたんに心配になって振り返ってしまいます。
だったら初めっから手を繋いで歩けばよかったのにね!
まぁダレンはそういうことにきちんと気がつける子で、行動に移せる子。
赤師弟親子のバランスはきっとこんな感じで成り立っている。はず。
自分の持ち物には名前を書いておけ、というのは果たして万国共通の概念なのだろうか?
少なくとも僕にとってそれは常識だ。
半バンパイアになってからだってそれは変わらない。
新しく買ったものには小さく名前を刻んでいく。
「なんだ、わざわざ新しいのを買ってやったというのに、いきなり落書きしおって」
それを見ていたクレプスリーは落胆の声を上げた。
クレプスリーの中には名前を書くという習慣はどうにも根付いていないようだ。
「落書きじゃないよ」
「嘘をつけ。このたわけが」
「ほんとだって。名前を書いてるだけだよ」
「名前?」
「そ」
マジックを片手に、その手は止めない。
不思議そうに手元を覗き込んでくるクレプスリーだったが、眉間に大きく皺を寄せて首をひねるばかりだ。
「やっぱり落書きではないか」
「文字が読めないあんたにとやかく言われたくないね」
「何だと!?」
確かに僕は字が上手い方じゃない。
それに紙に刻むのと違って書く場所が必ずしも平面ではないから余計だ。
それでも文字が読めないクレプスリーに『落書き』と評されるのはどうにも解せない。
読めないくせに何でそれを落書きだって思うんだよ。
胸の中に湧き上がった苛立ちの所為で不必要にクレプスリーをからかってやりたい衝動に駆られた。
手に持ったマジックをクレプスリーの方に向けてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてやった。
「何ならクレプスリーの分も書いてあげようか?あんた読み書きできないもんね」
「余計なお世話だ!名前くらい書ける!」
「名前だけは、の間違いだろ?」
「うるさいっ!」
「ほらほら、遠慮しなくって良いから~」
「しとらんっ!名前なんぞ書かなくて良い!」
「なんで?無くなった時に誰かに取られたら大変じゃない。やっぱり自分のものにはきちんと名前を書いておかないとね」
嫌がるクレプスリーにのしかかり、取り押さえ、マジックを走らせる。
「こらっ!?お前どこに名前を書く気だっっ!!」
「だから、自分の持ち物だって。ほらほら動くと名前が書けないんだけらじっとしててよ」
「するか!いい加減にしろ!」
僕の首根っこを掴んで無理やり引き剥がし、ぽいっと投げ捨てクレプスリーはすぐさま鏡の前に飛んでいった。
テーブルに備えられたティッシュでごしごしと擦って落とそうと試みているが、残念ながらこのマジックは油性だ。
そんなに簡単に落ちやしない。
「どうしてくれるんだ!このバカが!!」
「だって簡単に落ちたら意味が無いじゃない」
「くそっ!」
着ていたコートをばさりと脱ぎ捨てた。
「どこ行くの?」
「シャワー浴びて落としてくる!!」
「落ちちゃったらまた書いてあげるからね」
「書くなっ!」
シャツを僕の鼻っ面めがけて投げつける。
くそっ!ともう一度悪態を吐くと、クレプスリーはシャワールームに消えていった。
その一瞬、僕が首筋に刻んだ 『Darrn Shan』 の文字がちらりと視界に映り、僕は満足感に満ち満ちた。
しるし
(コレは僕のだから、皆手を出しちゃだめだよ?)
少なくとも僕にとってそれは常識だ。
半バンパイアになってからだってそれは変わらない。
新しく買ったものには小さく名前を刻んでいく。
「なんだ、わざわざ新しいのを買ってやったというのに、いきなり落書きしおって」
それを見ていたクレプスリーは落胆の声を上げた。
クレプスリーの中には名前を書くという習慣はどうにも根付いていないようだ。
「落書きじゃないよ」
「嘘をつけ。このたわけが」
「ほんとだって。名前を書いてるだけだよ」
「名前?」
「そ」
マジックを片手に、その手は止めない。
不思議そうに手元を覗き込んでくるクレプスリーだったが、眉間に大きく皺を寄せて首をひねるばかりだ。
「やっぱり落書きではないか」
「文字が読めないあんたにとやかく言われたくないね」
「何だと!?」
確かに僕は字が上手い方じゃない。
それに紙に刻むのと違って書く場所が必ずしも平面ではないから余計だ。
それでも文字が読めないクレプスリーに『落書き』と評されるのはどうにも解せない。
読めないくせに何でそれを落書きだって思うんだよ。
胸の中に湧き上がった苛立ちの所為で不必要にクレプスリーをからかってやりたい衝動に駆られた。
手に持ったマジックをクレプスリーの方に向けてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてやった。
「何ならクレプスリーの分も書いてあげようか?あんた読み書きできないもんね」
「余計なお世話だ!名前くらい書ける!」
「名前だけは、の間違いだろ?」
「うるさいっ!」
「ほらほら、遠慮しなくって良いから~」
「しとらんっ!名前なんぞ書かなくて良い!」
「なんで?無くなった時に誰かに取られたら大変じゃない。やっぱり自分のものにはきちんと名前を書いておかないとね」
嫌がるクレプスリーにのしかかり、取り押さえ、マジックを走らせる。
「こらっ!?お前どこに名前を書く気だっっ!!」
「だから、自分の持ち物だって。ほらほら動くと名前が書けないんだけらじっとしててよ」
「するか!いい加減にしろ!」
僕の首根っこを掴んで無理やり引き剥がし、ぽいっと投げ捨てクレプスリーはすぐさま鏡の前に飛んでいった。
テーブルに備えられたティッシュでごしごしと擦って落とそうと試みているが、残念ながらこのマジックは油性だ。
そんなに簡単に落ちやしない。
「どうしてくれるんだ!このバカが!!」
「だって簡単に落ちたら意味が無いじゃない」
「くそっ!」
着ていたコートをばさりと脱ぎ捨てた。
「どこ行くの?」
「シャワー浴びて落としてくる!!」
「落ちちゃったらまた書いてあげるからね」
「書くなっ!」
シャツを僕の鼻っ面めがけて投げつける。
くそっ!ともう一度悪態を吐くと、クレプスリーはシャワールームに消えていった。
その一瞬、僕が首筋に刻んだ 『Darrn Shan』 の文字がちらりと視界に映り、僕は満足感に満ち満ちた。
しるし
(コレは僕のだから、皆手を出しちゃだめだよ?)
なんか赤師弟というよりもダレ→クレって感じ?
いやいや、ダレンがファザコンなんだよきっと。
クレプスリーは皆のアイドル。
取られたくないので私が先に名前を書いてやる・・・・・・っ!かきかき。
いやいや、ダレンがファザコンなんだよきっと。
クレプスリーは皆のアイドル。
取られたくないので私が先に名前を書いてやる・・・・・・っ!かきかき。