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~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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キョロキョロと周囲を見渡す仕草を繰り返すクレプスリーが視界の端に映る。
なんだか何かを探しているような感じがして僕は声を掛けた。
普段だったら一々相手にしていられないところだったけれど、幸いにも今は休憩時間。
少しくらいなら話す時間もあるだろう。
なんせこの僕は今やバンパイア元帥として日夜執務に、・・・・・もとい、元帥見習いとして日々あれやこれやらを叩き込まれている最中なのだ。
普段はそれこそ寝る間もないくらいの勢いで戦闘の基礎やら戦術やらその他もろもろを勉強しなくてはならない。
実のところクレプスリーとゆっくり話すのも随分久しぶりな気がするくらいだ。

「何か探してるの?クレプスリー」
「ん・・・・・あぁ、ダレンか」

歩み寄る僕にも気がつかない位何かを真剣に探していたようだ。
返事は返ってきたけれど、視線はあちらこちらを追っている。

「なんか落とした?」
「いや・・・・・、実はな、マダムが籠に居らんのだ」
「・・・・・・は?」
「流石に無分別にバンパイアを襲うなどということは無いだろうが、それでも毒蜘蛛であることには変わりないからな」

むしろその言葉の端々からは、バンパイアの安否などよりもよっぽどマダム・オクタを心配しているのが見て取れた。
クレプスリーに真実を話していないことを思い出したのは、実はこの時が初めてだったりする。
だってあれから目まぐるしく事態が動いていって、僕自身着いてくだけで精一杯だったんだ。
仕方ない、の一言で片付けられないにしても、きっと僕だけの責任では無い。
それでも素直に謝罪の言葉が口を吐いたのは、勝手に行った行動に対する罪悪感が少しでもあったからだった。

「あの・・・ごめんクレプスリー・・・・・」
「お前を攻めるつもりなど毛頭無いわい。お前が寸暇を惜しんでバンパイアとしてのあり方を叩き込まれているのは知っている」

僕の言葉を『手下としての勤めも果たせていなくてゴメン』と勝手に解釈したクレプスリー。
そりゃぁ怒られるよりかはずっとマシだけど・・・・。
だけれども僕が言いたいのはそういうことじゃなくて。

「そうじゃなくて・・・・・、さ」
「わかっておる、だから代わりにハーキャットにでも頼んでいたのであろう?
 だがハーキャットも今ではシーバーの補佐で忙しく働いておるしな。
 むしろ今までマダムのことを忘れていた我輩が悪いのだ」
「だからね・・・・そのマダムのことで・・・・・」
「あ奴は知能が高いから、世話をしてくれるものがいないとわかって勝手に籠を開けたんだろうよ。それくらいの芸当は朝飯前だからな」

いやいや、そうかもしれないけどさ。
まずは僕の話を聞いてよ?
しかし心の中で思った位では残念ながら意思というのは通じないのが世の常。

「幸いにもここには虫やらなにやらは捨てるほどいるから飢えているということも無いだろうが・・・・・やはり放っておくのは忍びない。
 早いうちに捕まえたいのだが、いかんせんマウンテンは広すぎてな。探しても探してもきりが無いのだ。
 おまけに人では通れんような横穴がいくつもあるから完全には調べ切れんし・・・・・・・
 まぁ、時間はあるからゆっくり探すつもりだ。
 もしお前が見かけるようなことがあればマダムを籠に戻しておいてくれ」

べらべらとしゃべりつくして満足したのか、クレプスリーは新たな場所を探しに踵を返した。

「お前も何かと大変だろうが、元帥たちがついているから大丈夫だ。今のうちにしっかりとあれやこれやを学んでおくんだぞ」

肩越しに片手を上げて歩み去る背中に、僕は勇気を振り絞って声を掛ける。

「クレプスリーっ!」
「・・・・・・なんだ・・・・?」

思いの外大きくなった声に自分自身驚いてしまったけれど、クレプスリーはもっと驚いた顔をして振り向いた。

「あの・・・・さ・・・・・。言うのが遅くなって悪かった、とは思っているんだよ・・・・?」

もじもじと、歯切れ悪く言葉を紡ぐ僕の姿にいぶかしげな視線が投げかけられる。

「実はさ・・・・・マダム・・・・・マウンテンに放しちゃったんだよね・・・・・」
「・・・・・なっ・・・・・!?」
「いや、相談も無く決めちゃって悪かったとは思ってるんだよ?でもあの時は相談できるような状況でも無かったし・・・・・」
「・・・・・いつの・・・話だ・・・・・?」
「カーダの裏切りがわかってすぐのバンパニーズ一掃作戦の直後・・・・・・。あの時の蜘蛛がマダムに惚れてたみたいだから・・・・・」
「・・・・だから・・・・放したというのか・・・・・・?」
「うん・・・・・。シーバーも籠で飼うよりも放してやったほうがいいだろうって・・・・・・」
「・・・・・・そうか・・・・・・・・そ・・・・・か」

サァッ、ともともと血色の悪い顔色が一段と青白くなったかと思うと、クレプスリーはそのまま泡を吹いてぶっ倒れてしまった。

「ちょっ!?!?クレプスリーっっ!?!?」


それから30分後。
意識を取り戻したクレプスリーから、マダムを手に入れるために費やしたお金の額を聞いて。
今度は僕が泡を吹いてぶっ倒れた。

そのことを知っていたら流石の僕だって安易にマウンテンに放したりしなかったさ。


今さらだけど
(いや、そういうことは先に言っておいて貰わないと)


クレプスリーは一体どこでマダムを手に入れたのか・・・・・?
どこかの裏取引とかだったら相当な高値がついていると思うんだ。
それをさらりと逃がしてしまったダレン。
きっと後でこっぴどくクレプスリーに叱られたことでしょう。
2010/08/24

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眼前の古い劇場をつと見上げて、なんとなく重苦しい気分になった。
きっとそれは劇場の雰囲気とかそういう類のものではなくて。
純粋に良い思い出が無いからだろう。

「ねぇ・・・・ここに泊まるの?」
「そうだ」
「別のとこにしようよ」
「もうすぐ日が昇る。近くに日光を避けられそうなところも他には無い。諦めろ」

袖を引く僕の手を軽く振り払ってクレプスリーは古びれた劇場のドアノブに手を掛けた。
どうやら人が入らなくなってから相当の年月が経っているらしい。
建付けがかなり悪く、軽く引いただけでは開きそうにも無かった。
かといって力いっぱいこめたら今度はドアの方が壊れてしまいそうになる。

「ほら、ここには入るなってことなんだよ」
「そんなわけがあるか。ただ単に古いだけだ。なんなら扉を壊してしまっても構わんだろう。奥まで入れば日は防げる」
「そこまでして中に入らなくてもいいじゃん」

他に日を避けられるところは無い、なんて言うけどそんなのは嘘だ。
少し戻ったところに大きな木の根の洞があるのを僕は見た。
確かに建物の中ほど日は避けられないだろうけど、死ぬほどじゃない。
無理に入らなくってもあそこで十分なのはクレプスリーだってわかっているはずだ。
なのに頑としてあんたはココで昼を明かすことを譲らない。
まるであんたはこの劇場に固執しているみたいだ。

「・・・・・なに?この劇場になんかあるの?」
「・・・・・何故そんなことを聞く」
「あんたが固執しているから」
「別にそうじゃない。ただより日を避けられるところがあるならそちらを取りたいだけだ」
「どうだか」

もとより明確な答えが返ってくることなど期待していなかった。
あまりにも一遍通りな返答に辟易しながら僕はぶすりと顔をむくれさせてそっぽを向く。

「お前こそ此処を拒否しておるようだが、何かあるのではないか?」
「別に」
「ならどうして頑なに拒否する」
「・・・・・ただココが嫌なだけだよ」
「その理由を聞いておる」

なおも開かない扉と格闘しながら、こちらを振り返りもしないでクレプスリーが聞いてくる。

「・・・・・・大方、思い出したくないんだろう・・・・?」
「・・・・・何を?」

クレプスリーの言わんとすることはわかったけれど、敢えてわからないフリをしてやった。
そんな態度を知ってか知らずか、はたまた気にも止めずにか、クレプスリーは続ける。

「特に此処は、あの劇場と造りが似ているからな。否が応でもあの日のことを思い出させる」
「・・・・・・・・・」
「親友と思っていた者の心内を知り、人生を大きく狂わせる過ちを犯し、そして―――お前が人間では無くなった場所だ。何も感じない方がおかしい」
「・・・忘れたよ・・・・そんな昔のこと・・・・」
「そんな簡単に忘れられるものか」

忘れられるわけが無いのだ・・・・・、とまるで自分自身に言い聞かせるようにクレプスリーが言う。

だから、嫌なんだ。

あんたがそんな風になるから、僕はこの場所が嫌だったんだ。
そんな風に嫌悪していた時期は、とっくの昔に終わっているのに。
あんただけは一人、自責の念から解放もされずに戒め続ける。
あんたを恨んだことは確かにあった。
でもそれは過ぎた話。
もう、終わったのだ。

あんたのことはもう憎んでいないよ、そう告げようとした時。
ミシミシと鈍い音を立てて扉が開かれた。
ぽっかりと開いた暗い室内。
陰湿な空気で満たされていた腹の内をさらけ出すようにどんより漏れ出。
代わりに朝の澄んだ空気がさぁっ、と吹き込んでいった。

この扉のように、あんたもいつか解放されればいいのに・・・・・・。
そんな日が来るのかどうかも定かではなかったが、僕は思わずにはいられなかった。


憎い人、憎い場所
(ずっと昔の話じゃないか)

時間軸が自分でもわからない。
とにもかくにも古い劇場は二人にとってタブーポイント。
主にクレプスリーが一人悶々とするよ。
そんなクレプスリーを見るのが嫌で、ダレンも嫌いなんだ。
でもクレプスリーは己の過ちを忘れないために、古い劇場を見るたびにそこで一泊するんだぜ。きっと。
まったく面倒臭いおっさんだぜ。だが愛してる。
2010/08/20
 

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「家族なんてさ、正直俺にはよくわからなかったよ」

「だって、アイツラは俺のことを商品としてしか見ていなかったし」

「俺にとっての家族って、結局のところそんなものだったんだ」

「だから昔お前が言ってたみたいな家族愛とか親の愛情ってなんなのか、本当はわからなかった」

「なんとなくわかったフリしてたけど、実際はすごくあやふやでお前が固執する理由なんてわからなかった」

「でもさ・・・・・・本当は俺は知ってたんだ。ずっとずっと気がつけなかったけど」

「・・・・・きっとトールがくれていたものって、ソレなんだと思うんだ」

「今なら、こいつが生まれた今ならなんとなくわかるよ」

「マーラと出逢って、シャンカスが生まれて、父親になって初めて気づいた」

「俺はトールに愛されていたんだって」

「別に疑っていたわけじゃない。ただ、愛されるってことがどういうことかがわからなかったんだ」

「マーラのことも愛しているけど、シャンカスに対するものってやっぱりどこか少し違う」

「どんなに手が掛かっても、頭にくることがあっても、でも本気で憎むことなんて出来ない」

「そこにいてくれるだけで胸の奥がこう・・・・あったかくなるっていうか・・・・・」

「なんていうか・・・・すごく嬉しいんだ。良かった、って思う。馬鹿みたいに毎日が楽しい」

「初めは自分の頭がおかしくなったのかと思ったよ」

「だからトールに相談したんだ。俺は気が触れてしまったんじゃないかって」

「そうしたらさ、トールの奴嬉しそうに笑ってこう言ったんだ。

 『私も、そうだったよ』

って」

「子供を愛するってことを知った。自分が愛されていたことを知った。自分がどれだけ果報者か思い知ったよ」

「・・・・・っと、話が反れたな。お前のことだった」

それまで楽しそうに口を開いていたことを詫びるように、申し訳なさ気に笑った。

「構わないよ。エブラのバカ親っぷりが聞けて楽しかったし」
「なんとでも言えよ。シャンカスは自慢の息子だからな」
「偉大なる『シャン』の名を継いでいるんだから当たり前だよ」

話を吹っかけた時、やたらと神妙な顔をしてしまったことを誤魔化すために敢えて軽口を叩く。
そうだ。
そんな深刻な話じゃないんだ。
ただ気になったから聞いてみただけなのに。
僕が聞いたことなんてこのまま忘れてしまってくれて構わないんだ。

「ま、・・・・冗談はさておき、だな」

急に真面目な顔に戻ったエブラ。
どうやらなかったことにはしてくれないらしい。

「ラーテンに直接聞くのが一番早いと思うよ。そういうことは」
「別に、クレプスリーのことだなんて一言も言ってないだろ?」
「でも、そうなんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「きっとお前が思っている通りの答えを返してくれると思う」
「・・・・そうかな・・・・・?」
「保証はしないけど。でも・・・・・家族ってのがどういうものかは、お前のほうがよっぽどよくわかってるはずだろ?」
「・・・・・・・・・」
「考えすぎないことだよ。ダレン」
「そう・・・かもな・・・・」


そう返したものの、ぐるぐると勝手に思考が巡っていく。
深く考える必要なんてない。
さらりと本人に聞いてしまえ。
何度も自身に吹っかけてみるけれどどうにも踏ん切りがつかない。
なのに足は自然とクレプスリーのトレーラーに向かっていた。
叩きたくないのに戸をノックして。
返事を待って中に入る。

「どうかしたのか?」
「・・・・・あのさ・・・・・」
「ん?」

怪訝そうにクレプスリーがこちらを見やる。

「クレプスリーはさ・・・・・・」
「なんだ?」
「僕を手下にして・・・・・・」

たった一言が、出て来ない。
たった四文字が、出て来ない。
僕とは違う答えを返されることが怖いのだ。
尊敬に値する師と弟子。
それ以上を望むのは贅沢なのかもしれない。
僕たちの関係は親子のそれとは違うものだから。
だからきっと、それは僕の胸だけに留めておく方がいいんだ。
無用な思考はこの際どこかに捨ててしまおう。

「・・・・・・ううん・・・・・なんでもない」
「・・・一体なんだというのだ?」
「気にしないで」

無理して笑って見せた。
偽者の親子にはお似合いの笑みだった。


しあわせ?
(問えないのは、僕が臆病だから)


7巻でシルク・ド・フリークに合流した位の頃。
よくよく考えたら赤師弟って『尊敬してる』とか『誇りに思う』とかは言ってっても
『幸せだよ』って言ったこと無いんじゃないのか?
多分この台詞って二人にとって禁句だったんじゃないかなぁ・・・・・
クレプスリーからしたら自分は紛れも無くダレンの幸せを奪った張本人で
ダレンからしたらそれを認めることでプライドが傷つくってのと、
クレプスリーが気にしていることを知っているから問えない。
そういう不器用さがこの四文字を言えなくさせていた、という妄想文でした。
2010/08/19

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酒瓶を片手に、クレプスリーのトレーラーへと足を向ける。
いつもは気が進まない場所なのに、足取りは思いのほか軽い。
理由は、なんとなく察しはついている。
でもソレを認めるのはなんとなく癪なので認めてやらない。

ノックもせずにトレーラーに踏み入る。
予想通り、差し込む日差しに部屋の主が顔をしかめた。
嫌がらせにドアを大きく開け放ってやろうかとも思ったが、そいつは少しばかり可哀相なのでやめることにして、素早く日の光を締め出す。

「・・・なんだ?」
「別に」
「用もないのに来るな」
「そう言うなよ。折角お酒もってきて上げたのに」
「・・・酒?」
「そ」

片手にぶら下げていた瓶を顔の高さに掲げて見せる。
瓶の中でチャプン、と液体が踊った。

「どういう風の吹き回しだ?」
「ん?別に深い意味なんて無いけどさ」

勝手に部屋の中を探ってグラスを二つ取り出した。
少し汚れていたから服の端っこでキュッと拭ってやった。
半ば放るようにしてグラスを渡せば、わずかに躊躇した後、クレプスリーは無言で差し出す。
トクトク・・・と静かな音でもってグラスが満たされると、クレプスリーがやはり無言で瓶をむしり取り、今度は僕のグラスに注いだ。
そうして声も無くチン、とグラスを打ち鳴らす。

「で?」
「ん?別に何にも無いってば」
「ならなんでいきなり酒なんぞを持ってきたのだ?」
「ん~・・・・強いて言うなら・・・・今日僕が初めて血を飲んだ日だから?」
「そう・・・・・なのか?」
「そうだよ」

多分、と心の中で付け足した。
そんな日にちなどいちいち覚えているわけが無い。
でもクレプスリーはそれ以上言及しようとはせずにグラスを空けた。
手酌で二杯目を注ぎ、それも一息で空けてしまう。

「・・・まぁ、そういうことにしておいてやろう」
「そりゃどうも」
「では仕切り直すとするか」

言われて僕もグラスの中身を空にしてからクレプスリーの前に差し出すと、これでもか!ってくらいになみなみと注がれた。
自分のグラスも酒で満たすとコホン、なんてわざとらしく咳払いして高らかに告げた。

「では、ダレン少年の新たな一歩を祝して!」

「「乾杯!!」」


記念日
(ただの乾杯の口実だと、お互いに知っている)


なんでもないありふれた毎日に乾杯する。
バンパイアってそういう生き方をしていると思うんだ。
2010/08/07

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デビーから手渡されたソレに、僕はゆっくりと袖を通した。
事態は切迫していたけれど、どうしてか動作一つ一つが緩慢になる。
何かを想い出していたのかもしれない。
あんたとの数え切れないほどの想い出を。
最後になるかもしれないと、どこかで感じていたのかもしれない。
あんたを想い出せる、最後の時だと。

周りの喧騒などすっぱりと切り離してしまったかのように、この瞬間だけ、時間が巻き戻る。


初めてこれに袖を通したのはいつのことだったか。
僕がバンパイアになってからそう時間が経っていない時のことだ。
あの人のことを少しだけ理解して、少しだけ好きになれた時。
僕はあの人に隠れてちょっとだけ袖を通したことがあった。
そうすればもっとあんたのことがわかるかと思ったから。
まぁ、実際はそんなことあるわけもないんだけど。
しかも当時の僕には、ソレはとても似合っているなんて言えなかった。
どんなに腕を伸ばしても指先は袖口から顔を見せることはなかった。
背伸びをしたって裾はずるずると床を擦ってしまった。

次はあんたが死んだ後だ。
あんたが死んで、僕自身も殺しかけてしまっていたあの時。
トラスカが僕に着させてくれた。
僕を救うために。
あんたの死を救うために。
何もわからずに、何も感じずに着たソレはただの布切れに過ぎなかった。
死んだ虚ろの目には、何の感慨も映らなかった。
厭々ながらに見せられた鏡に映る自分の姿。
かろうじて背丈はそれなりになったけど、やっぱり袖は長かった。
純化をして、あんたに追いつけたと思っていた。
でも、ほんの少し、あんたとの距離が縮んだだけで。
やっぱり、僕には似合っていなかった。


ポツリポツリと思い出す。
ゆっくりだったソレも、次第に激流のように巡り出し、そして静かになっていく。
最後に脳裏を過ぎったのは、コレを羽織ったあんたの姿だ。
認めたくはないけれど、あんたは僕の目標だった。
あんたのように、コレが似合うバンパイアになりたかった。
どうかな?
今の僕には、似合っているかな?
二度目の純化を経て、身長はきっとあんたと変わらないくらいになったよ。
袖口だって今は余ったりなんかしていない。
まるであんたが着ているみたいに、着こなせているだろう?
ねぇ見てる?
僕はこんなにも大きくなったんだよ?
ぶかぶかだったコートも、今じゃ僕のためにあつらえたかのようだろう?

ほら・・・・なんか言ってよ・・・・・
いつもの悪態だっていい。
こんな時に何を考えているって、叱ってくれたっていい。
だから・・・・なんか言ってよ・・・・・
お願いだから・・・・・

あんたの一言があれば、僕はどんな運命だって切り開ける気がするんだ。
だから、お願い。
たった一言。
たった一言でいいから・・・・


ちょうどいい
(ほら見てよ。似合うって言ってよ・・・・・)



・・・・・なんだか言いたいことが全然まとまらなかった・・・・・・
やばい・・・・コレは後で書き直しをするかもです・・・・・
2010/08/06
 

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