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我先にと報告をしようとする将軍の話を聞き終え、休憩にとパリスをクレドン・ラートの間に追い出すととたんに元帥の間は静寂に満たされる。
ついさっきまでバンパイアで溢れかえっていたなんて想像も出来ないくらい静かだ。
そんな時だったからか、ふぅ、とついた溜め息すらクレプスリーは耳聡く気がついた。
「疲れたか?」
「・・・・・まぁね」
連日休憩もままならずに会議を行っているのだ。
疲れていない、なんて強がったところで、ぐったりと椅子に沈んだままの格好で言っても何の説得力も無いから正直に答えた。
このまま眠ってしまいたい位身体は疲労しきっている。
「泣き言は言っていられんぞ」
「わかってるよ」
僕がこうなってしまったのもいわゆる運命という奴で。
運命ならば甘んじて受けなければならない。
「休憩、後どのくらい?」
「小一時間といったところだな」
「そんだけしかないのか・・・・・・はぁ・・・・・先は長いな・・・・・」
「他の者の前でそのような泣き言は言うなよ?士気に関わる」
「わかってるって」
拗ねたように口を尖らせながらも、自分だけは特別だと暗に言っているようで可笑しかった。
「少し血を飲んでおけ。身体が持たんぞ」
「大丈夫だって。それよりも、クレプスリーこそちゃんと休みなよ」
元帥である僕を甲斐甲斐しく介抱しようとグラスを手に取ったクレプスリーを窘める。
はっきり言ってあんたの方がよっぽど疲れているはずだ。
戦術というものがあまり良くわかっていない僕は会議に参加していてもほとんどお飾りみたいなもので、実質クレプスリーがそのほとんどを考え、僕が決定事項としてクレプスリーの代わりに将軍たちに命令を下しているに過ぎなかった。
だから僕の疲労なんてみんなの半分も無いはずなんだ。
「僕はただのお飾り元帥。あんたが倒れでもしたらとたんに役立たずの半バンパイアになっちゃうんだから」
「自分の立場というものがわかっているではないか」
「そりゃぁね」
わからいでか。
そりゃぁ皆表面上は敬ってくれる。
こんなのでも一応元帥なんて肩書きがあるからね。
でも皆わかってる。
実質実権を握っているのはラーテン・クレプスリーだって。
「ダレン閣下!」なんて言いながら、目線はクレプスリーを捕らえていることなんてざらにある。
はじめこそイラついたりもしたけれど、自分の無力さを考えたらそうなるのも当然だと思えた。
「元帥って呼ばれるべきなのは、本当はあんただよね」
昔は元帥候補にも名を連ねたほどだと、以前ガブナーに聞いたことがある。
僕の後継人として会議の前に立つクレプスリーに文句が一つも上がらなかったことと無関係ではないだろう。
「ねぇクレプスリー」
「なんだ?」
「元帥になりたいって気持ちは無いの?」
「何だやぶから棒に」
「元帥になりたいって少しも思わないの?」
「・・・・・・今だって憧れはある」
元帥は一族の誇りであり尊敬の対象だ。
いうなればそれは漫画の中のヒーローのように。
クレプスリーにもそんな少年心が残っていたことが嬉しくて、僕は今の今まで怠惰に身を沈めていた玉座から飛び降りた。
「ならさっ!」
「っなっ!?」
玉座の横を定位置に立っていたクレプスリーの腕を掴んで、入れ替わりに座らせる。
「今の感想は?ラーテン閣下?」
無理やり座らせたことを怒るよりも早く、肘掛にもたれながらニコニコ問う僕の屈託の無い笑顔に、毒気を抜かれた様子で苦笑した。
「あぁ、悪くない気分だ」
「そりゃ良かった」
椅子
(僕だけが知ってる、あんたの特等席)
17:12完成
この後ダレンを膝の上に座らせるかどうかで小一時間悩んだ。
それを他の元帥に目撃されてからかわれ続けるところまで妄想したけど歯切れが悪かったので没に相成った。