~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「「「我ら!名古屋おもてなし武将なりっ!」」」
抜けるように高く青い空の下、6人の男たちの声が高らかに、それでいて堂々と響いた。
一拍をおいて黄色い悲鳴がそこかしこから沸き上がる。
「・・・・・・・・・すっごいなぁ・・・・・・・・・」
それがそれぞれの決めポーズを取る武将に向けられたものなのか、それとも歓声の方を指しているのかは自分でも良く分からなかった。ただただ「すごい」の一言しか出てこない。
「・・・・・・そぉかぁ?」
隣から上がる場違いに冷めた声に振り返り、思った位置に目的の顔が見えないことに疑問を感じる。そのときになってようやく、自分が身を乗り出していることに気が付いた。
年甲斐も無くはしゃいでいたのかもしれない。
改めて体の位置を元に戻した。
「だって、すごいじゃないか実際」
「ミーハー女が騒いでるだけじゃねーか」
「なんでお前は・・・・・・そう穿ったモノの見方しかできないんだよ」
「そりゃ、本物の武将でも出てくりゃ俺だって血が騒ぐだろうけどよ。あんなもん、どう考えたって現代受けするように美化200%くらいしてるんだ。興味ねーな」
言葉通り、それでも周囲の人の気を害さない程度の心遣いはあったのだろう、舞台から視線だけ反らすようにして手にしていた缶に口を付けた。
完全に興味は失せているらしい。
元々ここに来たいと言ったのは俺の方だし、速水は最初っから興味を示すそぶりも見せなかった。
そのくせこうして付き合ってくれるのは速水なりの優しさなのだろうと気が付いたのは割と最近のことだ。
きゃぁぁっ!と再び割れんばかりの歓声が上がる。
視線を戻すと、いつの間にやら各武将の紹介に移っていた。
足軽の紹介を受け、武将が舞台の真ん中で決め台詞を言うというのが一連の流れらしい。
ある者は得意の大槍を自由自在に操って見せ、またある者は別称を体現するかのように舞台中をはね回り、また別の者は異名通りの存在感を見せつけた。
「格好いいなぁ」
「・・・・・・・・・」
意図せずに漏れ出た言葉に隣から冷ややかな視線を感じる。
たぶん何を言っても同意は得られそうにないことを彼の纏う空気から察し、あえて反応を返さない。
もしかしたら、俺は速水の言うとおりただのミーハーなのかもしれない。
天窓のお地蔵様なんて呼ばれた俺だけど、別に仙人のように世を達観視していたわけでもない。周りはどのような評価を下していたのかは分からないが、俺自身はごくごく普通の一般中年男性なのだ。
実のところ新製品とか季節限定とかの煽り文句にはすこぶる弱い人種という自覚もある。。今回この地に来たのだって何気なく眺めてた雑誌(ちなみに雑誌そのものは患者さんが置いていったものである)で特集を組まれていたからだ。
(ミーハーで何が悪い、なんて言ったらこいつは驚くかな?)
横目にちらり、速水の様子を確認。
(・・・・・・ん?)
何となく感じた、違和感。
興味がないと言っている割にはぶつぶつと自分にしか聞こえないくらいの大きさで愚痴っているようにも見える。
敵視してもどうしようも無い相手に喧嘩を売りそうなりつつもそれを自ら律しているような、そんなことをしている自分自身にふてくされているような。
そう。
一言で言ってしまえば、拗ねているような・・・・・・。
(・・・・・・なんだ・・・・・・)
可愛いところもあるじゃないか、と心の中で苦笑したのは俺だけの秘密にしておいてやろう。
舞台では一番の見所である演舞が始まっており、周囲はうるさい位の歓声に包まれていて少しくらい私語を挟んでも聞き咎められることもないだろう。
隣で拗ねる男の脇腹を肘でつついた。
「速水」
「・・・・・・何だよ」
「一番格好いいのは、血塗れ将軍だからな?」
「・・・っ!?」
吹き出しそうになったのをすんでのところで飲み込んでなんとか粗相だけは回避した。
「っ、お前なぁ・・・!!」
「ん?」
確信犯でわざと小首を傾げて見せると、速水は深々と、そりゃぁもう深々と溜息を吐く。
吐ききったら今度はクツクツ笑いがこみ上げてきたようだ。
先ほどのお返しなのだろうか。
軽く握った拳が脇腹を叩く。
「当たり前だろ。俺を誰だと思っていやがる」
そうだとも。
お前を好きな時点で、俺はミーハーと言われても仕方ない人間なのだ。
格好いい人
(お前以上なんて居やしない)
抜けるように高く青い空の下、6人の男たちの声が高らかに、それでいて堂々と響いた。
一拍をおいて黄色い悲鳴がそこかしこから沸き上がる。
「・・・・・・・・・すっごいなぁ・・・・・・・・・」
それがそれぞれの決めポーズを取る武将に向けられたものなのか、それとも歓声の方を指しているのかは自分でも良く分からなかった。ただただ「すごい」の一言しか出てこない。
「・・・・・・そぉかぁ?」
隣から上がる場違いに冷めた声に振り返り、思った位置に目的の顔が見えないことに疑問を感じる。そのときになってようやく、自分が身を乗り出していることに気が付いた。
年甲斐も無くはしゃいでいたのかもしれない。
改めて体の位置を元に戻した。
「だって、すごいじゃないか実際」
「ミーハー女が騒いでるだけじゃねーか」
「なんでお前は・・・・・・そう穿ったモノの見方しかできないんだよ」
「そりゃ、本物の武将でも出てくりゃ俺だって血が騒ぐだろうけどよ。あんなもん、どう考えたって現代受けするように美化200%くらいしてるんだ。興味ねーな」
言葉通り、それでも周囲の人の気を害さない程度の心遣いはあったのだろう、舞台から視線だけ反らすようにして手にしていた缶に口を付けた。
完全に興味は失せているらしい。
元々ここに来たいと言ったのは俺の方だし、速水は最初っから興味を示すそぶりも見せなかった。
そのくせこうして付き合ってくれるのは速水なりの優しさなのだろうと気が付いたのは割と最近のことだ。
きゃぁぁっ!と再び割れんばかりの歓声が上がる。
視線を戻すと、いつの間にやら各武将の紹介に移っていた。
足軽の紹介を受け、武将が舞台の真ん中で決め台詞を言うというのが一連の流れらしい。
ある者は得意の大槍を自由自在に操って見せ、またある者は別称を体現するかのように舞台中をはね回り、また別の者は異名通りの存在感を見せつけた。
「格好いいなぁ」
「・・・・・・・・・」
意図せずに漏れ出た言葉に隣から冷ややかな視線を感じる。
たぶん何を言っても同意は得られそうにないことを彼の纏う空気から察し、あえて反応を返さない。
もしかしたら、俺は速水の言うとおりただのミーハーなのかもしれない。
天窓のお地蔵様なんて呼ばれた俺だけど、別に仙人のように世を達観視していたわけでもない。周りはどのような評価を下していたのかは分からないが、俺自身はごくごく普通の一般中年男性なのだ。
実のところ新製品とか季節限定とかの煽り文句にはすこぶる弱い人種という自覚もある。。今回この地に来たのだって何気なく眺めてた雑誌(ちなみに雑誌そのものは患者さんが置いていったものである)で特集を組まれていたからだ。
(ミーハーで何が悪い、なんて言ったらこいつは驚くかな?)
横目にちらり、速水の様子を確認。
(・・・・・・ん?)
何となく感じた、違和感。
興味がないと言っている割にはぶつぶつと自分にしか聞こえないくらいの大きさで愚痴っているようにも見える。
敵視してもどうしようも無い相手に喧嘩を売りそうなりつつもそれを自ら律しているような、そんなことをしている自分自身にふてくされているような。
そう。
一言で言ってしまえば、拗ねているような・・・・・・。
(・・・・・・なんだ・・・・・・)
可愛いところもあるじゃないか、と心の中で苦笑したのは俺だけの秘密にしておいてやろう。
舞台では一番の見所である演舞が始まっており、周囲はうるさい位の歓声に包まれていて少しくらい私語を挟んでも聞き咎められることもないだろう。
隣で拗ねる男の脇腹を肘でつついた。
「速水」
「・・・・・・何だよ」
「一番格好いいのは、血塗れ将軍だからな?」
「・・・っ!?」
吹き出しそうになったのをすんでのところで飲み込んでなんとか粗相だけは回避した。
「っ、お前なぁ・・・!!」
「ん?」
確信犯でわざと小首を傾げて見せると、速水は深々と、そりゃぁもう深々と溜息を吐く。
吐ききったら今度はクツクツ笑いがこみ上げてきたようだ。
先ほどのお返しなのだろうか。
軽く握った拳が脇腹を叩く。
「当たり前だろ。俺を誰だと思っていやがる」
そうだとも。
お前を好きな時点で、俺はミーハーと言われても仕方ない人間なのだ。
格好いい人
(お前以上なんて居やしない)
名古屋に旅行に行ったので、ついでに妄想して二人に行かせてみたよ。
速水は他人が格好いいと評されていると面白くない心の狭い人(笑)。
そんなときフォローできるのが行灯先生です。
ぶっちゃけこんな可愛いおっさんが横にいたら、私は演舞を見ているどころじゃない!
2010/09/27
速水は他人が格好いいと評されていると面白くない心の狭い人(笑)。
そんなときフォローできるのが行灯先生です。
ぶっちゃけこんな可愛いおっさんが横にいたら、私は演舞を見ているどころじゃない!
2010/09/27
PR
「・・・・・・・・・」
目の前の男の行動をただ黙って観察する。
「・・・・・・・・・」
不抜けているようにも見える。
瞼は開いているけれど実は寝ているのかもしれない。
半分開いているようで、半分閉じているような目でグラスからそびえるソフトクリームをつついているのだが、その動きはひどく緩慢で。
普段の彼から滲み出る覇気というものが一切感じられない。
彼が頼んだのは何だっただろうか。
たしかアイスココアとかそんなものだったように思う。
決して甘いものが嫌いなわけでは無いのだが、甘いココアとそれに輪をかけててんこ盛りにされたソフトクリームだ。
甘ったるさを想像して少しばかり胸焼けを起こしそうになる。
自分の分のブラックコーヒーを胃に流し込んで緩和を図った。
よくそのようなものが食べれるものだ、と感心したところで彼の普段の主食を思い出す。
そういえばこの男は暇さえあればチュッパを舐めていた。
言うなれば飴というものは砂糖の塊だ。
それを常日頃食べ続けている男なのだ。
本人は「効率的は糖分摂取法」と宣っていたが、実際のところただの甘党なのだと俺は踏んでいる。
「甘くないか?」
「・・・・・・・・・甘いぞ?」
会話ともいえないような言葉のやりとり。
一応起きているらしい。
「食べたいのか?」
「いらない」
差し出されたスプーンに盛られたクリームを軽く拒否すると、美味しいのに・・・・・・と小さくこぼして自身の口に納めた。
始めは溢れ出さんばかりの量だったソフトクリームも大分目減りして、ようやくストローをグラスに差し込めるくらいになった。
そもそもストローも挿せない位なみなみと注がれた飲み物というのもどうなのだろう?
傾けたコーヒーカップに口を付けながら俺はそんなことを考えていた。
(どうでもいいことだけどな)
胸中でこぼす。
そう、それはどうでも良いことなのだ。
目の前ではもたもたとストローの包装を開ける速水がいる。
ジェネラルの異名など微塵も感じさせない不器用さを最大限に発揮させて。
この男はこと救命救急医としてはピカイチだけれども、それ以外のことはてんでだめだめだと言うことはあまり知られていない。
「お前って・・・・・・本当に生活力無いよな」
「何だよ突然」
「いや。改めて痛感したから、つい」
「?」
ようやく取り出したストローをソフトクリームの上から突き立てようとしていた手を一瞬止める。
何のことを言われているのかさっぱり検討がついていないようだ。
小首を傾げるような仕草を見せてから、改めてストローを突き立てた。
そしてーーー
「・・・・・・あ・・・・・・」
数秒遅れて聞こえる単音。
グラスから溢れ出るクリーム。
見る見るグラスを伝ってテーブルに広がっていく。
何のことはない。
速水から見えない側、つまり向かいの席に座る俺の正面に面した部分のクリームが溶け落ちたのだ。
「速水のドジ」
クツクツと沸き上がる笑いを堪えて、それでも堪え切れ無い分を一言漏らす。
「・・・・・・お前・・・見えてたんなら教えろよ」
「普通気がつくだろ?」
あぁ。だめだ。
やっぱり笑いを堪えられそうにない。
腹を抱えたい衝動だけはどうにか抑えるけれど、肩が震えているのが自分でも分かった。
それを不服そうに見つめる速水は、
「・・・・・・気がついていないからこぼしたんだよ。バカ」
小さなプライドからだろうか?
手に付いたクリームをぺろり舐め取りながら、ごくごく小さな声を上げた。
そう。
こんなことはどうでもいい、取るに足らないことなのだ。
テーブルをクリームで汚してしまうことも。
お店の人に謝らないといけないことも。
これからお前の機嫌取りをしなければいけないことも。
すべてがすべて、どうでもいいことなんだ。
この男が。
将軍とも、神とも、悪魔とも恐れられるこの男が。
どうしようもない人間じみた失態をおかしてくれることに比べれば、本当に些細なことでしかない。
「俺は、知ってるよ」
お前はただの人間なんだ、って。
他の誰が忘れたって。
俺だけは、せめて俺だけは。
いつだってお前に思い出させてやるよ。
それが俺の役目だから。
「・・・・・・だから知ってたんなら教えろっての」
ねちねちと愚痴ろうとした速水は、俺の専門を思い出して閉口するしかなかったようだ。
空を舞えない人間様
目の前の男の行動をただ黙って観察する。
「・・・・・・・・・」
不抜けているようにも見える。
瞼は開いているけれど実は寝ているのかもしれない。
半分開いているようで、半分閉じているような目でグラスからそびえるソフトクリームをつついているのだが、その動きはひどく緩慢で。
普段の彼から滲み出る覇気というものが一切感じられない。
彼が頼んだのは何だっただろうか。
たしかアイスココアとかそんなものだったように思う。
決して甘いものが嫌いなわけでは無いのだが、甘いココアとそれに輪をかけててんこ盛りにされたソフトクリームだ。
甘ったるさを想像して少しばかり胸焼けを起こしそうになる。
自分の分のブラックコーヒーを胃に流し込んで緩和を図った。
よくそのようなものが食べれるものだ、と感心したところで彼の普段の主食を思い出す。
そういえばこの男は暇さえあればチュッパを舐めていた。
言うなれば飴というものは砂糖の塊だ。
それを常日頃食べ続けている男なのだ。
本人は「効率的は糖分摂取法」と宣っていたが、実際のところただの甘党なのだと俺は踏んでいる。
「甘くないか?」
「・・・・・・・・・甘いぞ?」
会話ともいえないような言葉のやりとり。
一応起きているらしい。
「食べたいのか?」
「いらない」
差し出されたスプーンに盛られたクリームを軽く拒否すると、美味しいのに・・・・・・と小さくこぼして自身の口に納めた。
始めは溢れ出さんばかりの量だったソフトクリームも大分目減りして、ようやくストローをグラスに差し込めるくらいになった。
そもそもストローも挿せない位なみなみと注がれた飲み物というのもどうなのだろう?
傾けたコーヒーカップに口を付けながら俺はそんなことを考えていた。
(どうでもいいことだけどな)
胸中でこぼす。
そう、それはどうでも良いことなのだ。
目の前ではもたもたとストローの包装を開ける速水がいる。
ジェネラルの異名など微塵も感じさせない不器用さを最大限に発揮させて。
この男はこと救命救急医としてはピカイチだけれども、それ以外のことはてんでだめだめだと言うことはあまり知られていない。
「お前って・・・・・・本当に生活力無いよな」
「何だよ突然」
「いや。改めて痛感したから、つい」
「?」
ようやく取り出したストローをソフトクリームの上から突き立てようとしていた手を一瞬止める。
何のことを言われているのかさっぱり検討がついていないようだ。
小首を傾げるような仕草を見せてから、改めてストローを突き立てた。
そしてーーー
「・・・・・・あ・・・・・・」
数秒遅れて聞こえる単音。
グラスから溢れ出るクリーム。
見る見るグラスを伝ってテーブルに広がっていく。
何のことはない。
速水から見えない側、つまり向かいの席に座る俺の正面に面した部分のクリームが溶け落ちたのだ。
「速水のドジ」
クツクツと沸き上がる笑いを堪えて、それでも堪え切れ無い分を一言漏らす。
「・・・・・・お前・・・見えてたんなら教えろよ」
「普通気がつくだろ?」
あぁ。だめだ。
やっぱり笑いを堪えられそうにない。
腹を抱えたい衝動だけはどうにか抑えるけれど、肩が震えているのが自分でも分かった。
それを不服そうに見つめる速水は、
「・・・・・・気がついていないからこぼしたんだよ。バカ」
小さなプライドからだろうか?
手に付いたクリームをぺろり舐め取りながら、ごくごく小さな声を上げた。
そう。
こんなことはどうでもいい、取るに足らないことなのだ。
テーブルをクリームで汚してしまうことも。
お店の人に謝らないといけないことも。
これからお前の機嫌取りをしなければいけないことも。
すべてがすべて、どうでもいいことなんだ。
この男が。
将軍とも、神とも、悪魔とも恐れられるこの男が。
どうしようもない人間じみた失態をおかしてくれることに比べれば、本当に些細なことでしかない。
「俺は、知ってるよ」
お前はただの人間なんだ、って。
他の誰が忘れたって。
俺だけは、せめて俺だけは。
いつだってお前に思い出させてやるよ。
それが俺の役目だから。
「・・・・・・だから知ってたんなら教えろっての」
ねちねちと愚痴ろうとした速水は、俺の専門を思い出して閉口するしかなかったようだ。
空を舞えない人間様
グッチーは速水唯一の息抜き的存在。
グッチーもここぞとばかりに息抜きさせてるんだよきっと。
速水にはそういう存在が絶対に必要だし、グッチー以上の適役も存在しない。
そんな風に二人の関係は成り立っているのさ。
2010/09/21
グッチーもここぞとばかりに息抜きさせてるんだよきっと。
速水にはそういう存在が絶対に必要だし、グッチー以上の適役も存在しない。
そんな風に二人の関係は成り立っているのさ。
2010/09/21