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~*リハビリ訓練道場*~ 小ネタ投下したり、サイトにUPするまでの一時保管所だったり。
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いつも通りの作業をこなしていると、それを背後から見守っていたハーキャットが申し訳なさそうに声を上げた。

「ダレン・・・・・・」
「ん?どうかした?」
「・・・・私は人の趣味をとやかく言うつもりは無い。嗜好は自由だからな」
「うん?」
「だがな、正直・・・・・これはどうかと思うぞ?」
「これ・・・・・って?」
「この部屋のことだ」

言われて部屋という名のシルク・ド・フリーク巡業中の個別テント内をぐるりと見渡す。
左右の支柱を使ってつるしたハンモック。
少しばかりの旅の荷物。
その他は折を見ては買い集めた小物類がいくばくか。
後は私物ではなくショーに必要な備品を預かっているだけだ。

「何か・・・変?」

荷物だって大して多くないし、少ない持ち物だって取り立てて不思議なものがあるわけじゃない。
そりゃぁ昔僕がまだ人間だった頃ならば、部屋中を飾る蜘蛛のポスターとかがあった。
机の中でこっそり飼った蜘蛛がいた。
それらは理解ない人から見れば精神を疑うほどのものかもしれない。
だが今はそんなものは何も無い。

一体ハーキャットが何に対して言っているのか、皆目見当がつかなかった。

「今は取り立てて変なもの持ってないよ?この小物だって、シャンカスたちが欲しいって言うからコンプリートまで手伝ってあげてるだけのやつだし・・・・」

手にしたのは街で売られているビニール製の小さな人形玩具。
最近子供たちの間で流行っているのだそうだ。
しかし子供たちのお小遣いではなかなか数を集められないらしく僕に泣きついて来たのだ。
僕はそんなにお金を使う必要を感じていなかったし、折角なら、と童心に還ったつもりでシャンカスたちと玩具集めをしているに過ぎない。
次々と集まっていくのはそれなりに面白いが、そこまで真剣に集めているわけでもなかった。

「違う。そんなことじゃない」
「?じゃぁなんだよ?」
「この部屋の色だ」
「色?」

言われてもう一度テント内を見渡す。
・・・・ふむ・・・・・・
言われてみれば・・・・・・・

「・・・・・ちょっとだけ赤が多いかな?」
「これのどこがちょっとなんだ」

手始めに、テントの底面である床には毛の長いシックな風合いの赤じゅうたんが敷かれている。
続いて旅の荷物はまとめて赤い箱にごそっと収めてある。
シャンカスたちと集めている小物は、自分で塗装した赤いショーケースの中に整然と並んでいる。
ショーの備品は私物と交わらないように天井からつるした赤いカーテンの向こうとこっちできちんと分けてある。
そのほかにも最近新しくしたマグカップやら、日記帳やら・・・・・・
気がつけばこのテント内には赤に支配されていた。
新人のフリークが僕のテントを訪れたら、必ず悲鳴を上げるレベルだ。
実はシルク・ド・フリーク内で『血まみれ部屋』などという異名をつけられていたりする。

「少しくらいは、と大目に見ていたが・・・・・いい加減これはどうかと思う」
「そう・・・・かなぁ・・・・?」
「第一こんなに赤々とした部屋では精神が落ち着かないだろう?」
「そんなこと無いよ」

むしろ落ち着いてくる。
まるであの人が傍にいてくれるみたいで。
今まで見たく、隣に立ってくれているようで。
途方も無い安心感がある。
だって―――

「だって、この色はクレプスリーの色だもの」



赤い色
(少しだけでも、あんたの存在を感じていたいんだ)



ダレンは病んでるわけじゃないんだよ。
純粋に赤い色を見てはクレプスリーを思い出しているだけ。
ハーキャットは赤だらけの部屋だと落ち着かないんだ。
むしろ(カーダの)青に染めたいとすら思っている。
この後部屋の配色を赤にするか青にするかで二人はけんかする。
どうしようもない設定。
2010/07/13

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<ヴェノム>撃破に成功した後、宗介は上官の制止に耳を傾ける様子も無く、一目散にかなめの元に走った。
彼女をこれ以上待たせてなるものか。
誰かに命令されたわけでもないのに、それは一種の義務感のように走った。
きっと今頃彼女は待ちくたびれて盛大に貧乏揺すりでもしているに違いない。
『遅い!何やってんのよあのバカは!?』などと言いながら、それでも自分を待っていることに疑いなど無かった。
だから走った。
1分でも、1秒でも早く、彼女の元に戻れるように。
彼女と過ごす、あの東京の生活に戻れるように。
そのうちミスリルからの呼び出しも掛かるだろう。
任務放棄したのち、このように再び勝手な行動をしているのだ。
<アーバレス>の存在がある以上、いきなり除隊処分ということはないと高をくくっている部分はある。
が、かなりの減俸は覚悟しなければならないだろう。

でも今はそんなことどうだっていい。
走る。
走る。
彼女の元へ。
彼女の場所へ。



かえるところ




AS暴動の為に混乱した空港では、予想通りまともな運行がされておらずかなりの時間待たされた。
それでも一応事態の収拾は始まっていたので何とかその日のうちに東京に帰りつくことは出来たので良しとする。
空港で仲間から何らかの帰還命令を受けるのでは?と身構えていたが、そのような事態もなかった。
多分状況を察した大佐・テッサがこの行動を見逃してくれただろう。
彼女には頭が上がらないことばかりだ。
今度基地に帰還したときにはきちんと礼を述べねばならない、と宗介は心の中で呟いた。

空港から電車を乗り継いで最寄の駅で下車すると、辺りはすっかり日が暮れていた。
日の落ちた道を二人並んで歩く。
ほとんど口も開かずに、ただただ家を目指した。
話したいこと、聞きたいことは山ほどあったが改まってみるとどう切り出したらいいのかがわからない。
考えあぐねているうちに、気がつけば住処のマンションまでほんの1・2分の距離になっていた。
とりあえず今は休むことが先決なのかもしれない。
身体が、精神が、疲労しきっている。
このような状態ではまともに思考などできはしない。
それは彼女も同じだろう。
いや、彼女の方が疲労の度合いでいえば何十倍も酷いはずだ。
彼女にとって今回のような出来事は非日常的な事象なのだから。

「では千鳥、ここで・・・・・」

都道を挟んで建っている二つのマンションの近くに差し掛かり、宗介が声を上げた。

「いろいろと言いたい事もあるだろうがまずは身体を休めて欲しい。詳しい事情はまた後日話す」
「・・・・・・あんたは何すっとぼけたこと言ってんのよ」
「わかっている。今回の件はきちんと説明の義務があると承知している。だが建設的に話すためにもまずは休息を・・・・・」
「そうじゃなくて!」

黙らせるべく炸裂したチョップが綺麗に宗介の頭に命中した。
香港で出会い頭に食らったものに比べればなんとも可愛らしい威力のチョップだ。

「あんた、どこに帰るつもりなのよ?」
「もちろん以前のセーフハウスだが?」
「ばか。あそこ引き払っちゃたじゃない。鍵も持ってないでしょう?それなのにどうやって入るつもりよ?」
「いや、それは・・・・・・」

確認はしていなかったが、きっとテッサが既に根回しをしてくれている気がした。
確かに鍵は持ってはいなかったがあの程度の鍵をピッキングすることはたやすい。
契約さえ通っているならばピッキングの犯罪性を問われることも無いだろう。
電気ガス水道は通っていないかもしれないが彼にとっては別段重要なことではない。
生活用品の類などが一切無かろうが、雨風を凌げるだけ十分だ。

「大丈夫だ。問題ない」
「問題大有りよ。あんたのことだからピッキングして入って、雨風が凌げれば十分とか思ってるんでしょうけど・・・・」
「・・・・・・君はエスパーか」
「なによ?本当にそんなこと考えてたわけ!?」
「うむ。肯定だ」
「肯定だ、じゃ無いわよ。そんなんじゃ休まるものも休まらないわよ!」
「むう・・・・・しかし他にどうすれば・・・・・・」

真剣に首を傾げる。

「・・・・・・うちに来なさいよ・・・・・・一晩くらいなら・・・その・・・・・泊めてあげるから・・・・・」
「・・・千鳥・・・」
「っ!べ、別に!来たくないならその辺で野宿でも、ピッキングでも何でもすれば!?」
「・・・・・・・いや・・・・・・・」

本来ならば、断るべきところなのだろう。
ただでさえ自分は彼女に迷惑ばかり掛けているのだ。
でも、今は。
今だけは。
できるだけそばにいたかった。
それを許してもらえるならば、断る理由はない。

「すまないが世話になる」


□■□


部屋に入るなり風呂に投げ込まれた。
文字通り、投げ込まれた。
彼女曰く、『その汚れ切ったつなぎで部屋をうろちょろしないで!』とのことらしいので甘んじてシャワーを借りることにした。
もとよりの習性で手早くシャワーを切り上げると、浴室の外には下着と部屋着らしいTシャツ・ジャージが置いてあった。
それらは男性ものだ。
なぜ彼女がこのようなものを?
疑問に思っていると洗面所の外から声がした。

「ソースケ?そこに置いてあるの使っていいから」
「それはありがたいのだが・・・・・・」

何せ身一つで香港から帰ってきてしまったので今の宗介には着替え一つ無かったのだ。
しかしなぜ一人暮らしの彼女の家に男性ものが置いてあるのか・・・・・
語尾の淀みから何を考えているのかを悟ったのか、彼女は付け加えた。

「それ父さんのなの。ほとんど使ってないし、ちゃんと洗濯してあるから大丈夫よ?」
「あぁ」

それならば納得がいく。
共に生活をしているわけではないにせよ、一着くらい家族の衣服があってもなんらおかしくは無い。
例え父親のものというのが何らかの事情による嘘だったとしても、一人暮らしの女性の防犯対策と考えれば一揃え位あってしかるべきだ。

「では貸してもらうことにしよう」

扉の向こうから「よろしいよろしい」という彼女の声が聞こえた。
着替えてからリビングに向かうと彼女が俺の格好を一瞥する。

「一応サイズは大丈夫みたいね」
「防弾性には不安はあるがおおむね問題ない」
「・・・・・一般家庭においてある衣服に防弾性を求められてもね・・・・・・」

普段であればハリセンの一発や二発が飛んでくるところだが、彼女の疲労もピークに達しているのだろう。
力なくうなだれるだけで終わった。
気だるそうにソファーから身を起こすと、入れ替わりに浴室に姿を消した。

さて、そうなるととたんに居住まいが悪くなる。
いろいろと気になる部分はあるのだが(主に外からの狙撃や盗聴の危険性、緊急時の非難退路の確保、敵侵入時のトラップ細工などだ)、これまでの経験上どう転んでもそのようなことをした暁には問答無用でベランダから逆さ吊りの刑に処されることは目に見えていたので、湧き上がる衝動を強靭な理性でもってやり込めた。
とにかく動かず、岩のごとく、山のごとく。
ほとんど武器もない状態で、それでいて事前のトラップなしに、最悪の事態が起こった場合の対策を練る。
どうすればこの脆弱な安全面を打開する出来るかを考える。
・・・・・・・・なんとも絶望的な状況か。
支援すら求めることの難しいこの状況で果たして生き残ることができるだろうか。
はじき出した演算はどう見積もっても分が悪い。

「これは・・・・・・・危険だ・・・・・・」
「何がよ。・・・・・っ、まさか・・・・・・変なこと考えてるんじゃないでしょうね!?」

いつの間にか彼女も入浴を終えていたらしい。
自分の身体を抱きかかえるようにして一歩後ろに後ずさった。

「変なことなどではない。今後に関わる重大かつ緊急を要する問題だ」
「こっ、今後ってあんたまさか・・・・・・っ!」

どうやら彼女もこれまでの経験を経て、今この場における危険性を察知してくれたらしい。

「準備が足りなさ過ぎる・・・・これでは・・・・・」
「準備・・・って・・・・・あの・・・・その・・・・・・・ア、アレの・・・こと・・・・?」
(っていうか、あんたいきなりそんなことまでしようとしているわけ?私たちまだキ、キスだってしていないのに・・・・・!?)

思い当たるのは以前に彼女に渡した護身用具だが、あれはあくまでも素人が扱って危険の無い代物だ。
敵が本気で仕掛けてきたならとてもではないが間に合わない。

「あぁ・・・・・俺には君を守る義務があるというのに何たることだ・・・っ!!」
「それは・・・・無いのは・・・・私も困る・・・けど・・・・・」
(でもソースケとなら・・・・それでもいいかな、なんて・・・・・いやいや、何考えてんのよあたし!)

今こうしている間にも敵は狙撃の瞬間を狙っているかもしれない。
これ以上ここに留まるのは危険すぎる。

「しかし今更嘆いても仕方が無い。時間は待ってはくれないのだ。・・・・かくなる上は、千鳥っ!」
「ひゃぁっ!や、そんな、いきなりだなんて・・・っ!」
(私にだって心の準備って物が・・・・っ!!)

掴んだ彼女の肩がわずかに震えていた。
無理も無い。
俺が日本を離れていた間、彼女は一人で敵と対峙していたと言っていた。
その時の恐怖が蘇っているのだ。
だが大丈夫だ。今は俺がいる。
今度はどんなことがあろうと必ず守ってみせる。

「以前に確保しておいた緊急用のセーフポイントがある。そこまで移動しよう。あそこにはまだ多少の武器も残っていたはずだ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


部屋を静寂が満たす。
彼女の冷めた声が、急速に室温を降下させた。

「む、どうした千鳥?急がないとここもいつ襲撃されるかわからないんだぞ!?」
「なにうすらとんかちなことをくちばしっているのかしらさがらそうすけぐんそう?」
「・・・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
「おかしいわねむこうでさいかいしたときにそれなりにいためつけてやったつもりだったけれどたりなかったのかしら?」
「痛いぞ千鳥。肘関節はそんな方向に曲がらないからやめろ」

抑揚の無い声で肘関節を決めに掛かる彼女にはえもいわれぬ恐ろしさがあった。

「・・・・・・あんたに期待なんかした私がバカだったわよっ!?」
「期待?なんの話だ?」

彼女は盛大に溜め息を吐いた。
意味のわからない言葉に首をひねる。

「うっさいっ!いいからさっさと寝るわよ!?あんたのせいで余計に疲れたじゃない」
「いかん千鳥。ここは危険だ」
「ふざけんじゃないわよ。そうやすやすと狙撃なんてされてたら日本なんつー国は成り立ってないわよ」

危険性を再三訴える俺の言葉を右から左に受け流すどころか、耳にすらいれず、疲れた足取りで寝室に向かいそのままベッドにダイブした。

「危険すぎるぞ千鳥!そんなことでは敵に撃ってくれと言っている様なものだ」
「うっさいわね~。大丈夫だって言ってんでしょ?」
「大丈夫なものか!?・・・・・わかった、移動はあきらめよう。だがせめて奇襲に備えて寝る場所はベッドの下にっ!」
「お断りよ」
「だがっ!」

ベッドに身体を沈めた彼女に詰め寄る。
もそりと頭だけ動かしてこちらを向いてくれた。

「・・・・・・そんなに不安なら・・・・」

引き起こそうと伸ばした手を逆に掴まれ、引き倒される。

「あんたも・・・・ここで寝たらいいじゃない・・・・・」
「ちちちちちちどりっ!?」
「こっちはあんたがいなくなってから・・・まともに睡眠取れなくて・・・・・今・・すっごい眠いのよ・・・・・・」
「いやっ!そ、そ、それはわかったが、だだだが、これ、れ、これはっ・・・・!」

布団の感触がそうさせるのか彼女は急速に睡魔に侵されていった。

「あんただって・・・・・ろくに・・・・・寝てなかったんでしょ・・・・・・?」
「いや・・・・・う・・・む、・・・・肯定・・・だ、が」
「だったら寝なさい」
「しか・・・し、だな、・・・・千鳥」

確かに俺自身まともに休息などとってはいなかったことは事実だ。
現実問題として意識・思考能力は確実に低下している自覚もある。
だが、これは。
この状況は。
いろいろな意味で危険すぎるのではないか・・・・・・・?

それでも彼女は手を離そうとはしなかった。
それどころかずりずりと俺をベッドに引きずるように、手から腕へ、そして肩へと手を這わせる。
無下に振り払うことも出来ず、最終的に俺の身体はぱたりとベッドに倒れこんだ。

「・・・・・・大丈夫だから・・・・・」
「千鳥・・・・?」

伸ばした腕が肩から頭部に回され、ゆるゆると彼女の胸元に引かれて行く。
やさしく掻き抱くように抱き寄せられ、額がこつんとぶつかった。
その奥から聞こえる、確かな鼓動。

―――トクン、トクン

「私は・・・・生きてる・・・・・」
「・・・・あぁ・・・・」

そう、これは君が生きている音。
生の証。

いつかもこうして抱かれたことがあった気がする。
そこでは何の恐怖も感じなかった。
いつそのような経験をしたのかは定かではない。
物心ついたときには既に生死の境で生きていたのだ。
こんな安らかな気持ちになったことなんて一度だって無かった。
でも俺は確かに知っている。
このぬくもりを。
この優しさを。

「そして・・・・・・あんたも生きてる・・・・・」
「あぁ」

そうだ。
俺は生きている。
君ほど清らかな音ではないけれど、俺の中でも、確かに脈打つものがある。

この感覚に名前をつけるとしたら、なんだろうか。
残念ながら俺はその回答を知らない。
ただ、とても懐かしい気持ちになった。
傭兵をしていた頃よりももっと前。
アフガンでゲリラをしていた頃よりももっと前。
ロシアで暗殺者としての教育を受けていた頃よりももっと前。

そんな、ずっとずっと昔に感じたことがある気がした。

「私が・・・・・守ってあげるから・・・・・」
「・・・・・・あぁ・・・・・・」
「だから・・・・・・・大丈夫・・・・」
「あぁ」

本当に何も怖いものなど無い。
彼女がいれば。
彼女といれば。
どんなことだってどうにか出来てしまいそうだ。


「・・・・・・おやすみ。ソースケ・・・・・」


返事を返すよりも早く、俺の意識は深いところに落ちていった。


落ち行く意識の中でおぼろげに

『かえってきたんだ』

そう思った。




・・・・・長っ・・・・!
フルメタの宗介とかなめに滾ったので書き散らかしてみた。
アニメ3期のTSR終了後?というか日本帰国後の妄想。
こんなやり取りがあったらいいなぁって。
実は小説のDBDは執筆段階では読んでいません。
この部分が書かれていないことを祈る・・・・・・・
ともかく高校生の恋愛万歳!
ちろりはソースケの嫁。
ソースケはちろりの犬。
2010/07/12

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バキバキと痛む関節をさすりながら身体を捩った。
日の光を避けて寝床を確保したつもりだったけれど、わずかに差し込んだ西日が今の僕にとっては炎天下の中にさらされているように感じられたのだ。
あまりのまぶしさに毛布を頭から被って少しでも暗がりになるようにあがいてみたが、どうにもならなかった。
純化作用によって敏感になった僕の感覚の前では、毛布一枚くらいの脆弱な隔たりなど何の意味も持たないものだった。
あきらめて身体を起き上がらせる。
体中痛いところだらけだ。
だからといって命に別状は無いのだから我慢するしかない、とクレプスリーは言った。
確かにその通りである。
だが、いわゆる成長痛というもののせいだとわかっていても、痛いものは痛いのだ。
我慢しろといわれてもいつまで続くとも知れない痛みと戦うのはなかなか骨が折れる。
特に痛みがきつい膝や足首に視線を落としてさすってやると、ばさりと何かが視界を覆う。

「うはぁ・・・・・・また伸びてきちゃった・・・・・」


何度目になるかわからない溜め息を吐いて、のろのろとバックからはさみを取り出す。
純化作用で伸びるのは何も身長だけではない。
髪の毛やら髭やらもやたらめったら伸びるのだ。
純化4週目にしてようやく髭は落ち着いてきたけれど、髪の毛の方はまだまだ留まることを知らない様子でいい加減溜め息も出尽くしてしまいそうだ。
どうせすぐに伸びることはわかっていたから無造作に一束掴んでばっさりと切り落とした。
続けて何度か繰り返せば、ようやく視界が開ける。
襟首の方はこの際放っておくことにする。
紐か何かでくくって置く方が面倒が無いと学んだのだ。

ざっくばらんに切りそろえた前髪を鏡で確認しているとようやくクレプスリーが起き出してきた。
切り落とした髪の毛を片付けている僕を一瞥して「またか」と零す。
しょうがないじゃないか。
僕だって伸ばしたくて伸ばしているんじゃないんだから。

「純化が始まった頃に比べれば大分マシな頻度にはなったではないか」

まるで心でも読んだかのタイミングでクレプスリーがそんなことを言う。

「そうだけどさ・・・・・・」
「もうすぐ純化が始まって5週になる。時期に終わるからそれまでの辛抱だ」
「・・・・・その台詞、2週間前にも聞いたんだけど・・・・・・」
「仕方なかろう。純化がどれだけの期間続くかは予想がつかん。3日で終わるものもいれば2ヶ月掛かるものもいる。終わるまではわからんのだ」
「他人事だと思って・・・・・・」
「事実だから仕方なかろう。一生続くわけじゃないんだ。必ず終わりが来る。それも事実だ」
「はぁ・・・・・・・」

僕は数えるのも億劫になった溜め息を今一度漏らした。

「だが本当に終わりは近いと思うぞ。髪の伸びるペースも少し遅くなって来たしな」
「そうだといいけど。ま、期待しないでおくよ」
「何を楽観視しておる。これからも大変だぞ?」
「?なんで?」

この体中の痛みから解放されて、飽きもせずに伸び続ける髪の毛との格闘もしなくて済むんだろう?
それのどこに心配があるというのか。

「わからんのか?」
「うん」

皆目見当もつかなかった。

「その髪の毛だ」
「髪?」
「お前、今純化が終わったらそのザンバラ頭で過ごすことになるんだぞ」
「あ・・・・・」

そういわれてみればその通りだ。
『またすぐに伸びるから適当でいいや』と短く短く切りそろえてしまった前髪に手を伸ばす。
それも髪形の考慮なんて何も無くバツンとはさみを横一文字に入れているだけなのだ。
確かに、今純化が終わってしまったらいろいろと問題だった。

「どうするつもりなんだ?バンパイアマウンテンにいた頃のように頭を丸めるなら特に問題は無いが・・・・」
「やだよっ!折角髪の毛が生えたんだから伸ばすっっ!!」
「我輩のように短くそろえてしまえば楽だぞ?」

クレプスリーは自分の髪の毛を撫で付けて見せた。
冗談かと思って「そうだね」なんて軽く返してやったら意外にも本気だったようで「そうかそうか!」と嬉しそうに笑うではないか!
あまつさえ「では早速そろえてやろう」なんていって指をぽきぽき鳴らす始末。
っ、冗談じゃない!!
なんで僕がそんな髪にならなくっちゃならないんだよ!
僕の頭に爪を伸ばしてきたクレプスリーの手を振り払って、思いっきり叫んでやった。

「誰がそんな恥ずかしい髪形になるかよ!?そんな髪になるくらいなら死んだ方がマシっ!!」


それから数日してようやく純化はおさまった。
髪型は僕が髪の毛を失う前のものとほとんど変わらないものに落ち着いた。
だけど。

心なしかクレプスリーは意気消沈しているようだった。


かみのけ
(あんたとおそろい!?それだけは勘弁してっ!!)


純化中の一コマ。
クレプスリーは本当は弟子とおそろいになりたかったんだよ。
思いが通じないのはいつものことだけどね。
2010/07/11

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珍しくクレプスリーが熟睡していた。

「夜だよ」

揺ってみたけど起きる気配が無かった。
いつもよりも眠りが深いところにあるようだ。

「早く起きないとご飯食べちゃうよ!」

少し脅してみるけどやっぱり反応が無い。
少し「うーん・・・」と身を捩る程度だ。

「起きないの?」

返事の代わりにクレプスリーがもごもごと何かを口にした。
良く聞き取れなかったので口元に耳を寄せてみる。

「・・・・・エラ・・・・・・」

それは僕も良く知る女性の名前だった。
クレプスリーのかつての連れ合い、すなわち奥さんだった人の名前。
黒髪が綺麗で気高い人だ。
しかし―――

「何でエラ?」

どうしてこのタイミングで彼女の名前が出るのだろうか。
もしかしてエラの夢でも見ているのか?

「あんたは今どこにいるのさ?」

問いには答えず、クレプスリーは次々と名前を口にしていった。

「・・・・・ガブナー・・・・カーダ・・・・・バネス・・・・・・・」

バンパイアマウンテンにいたときの面子だ。

「シーバー・・・・・・パリス元帥・・・・・・」

少しだけ畏まった様子でその名を呟いた。
一体どうしてしまったのか?
この人は夢の中でバンパイアマウンテンに舞い戻っているのだろうか?
なんて思っていると

「・・・・・エブラ・・・・・トラスカ・・・・・」

今度はシルク・ド・フリークのメンバーの名前を上げていく。
良く知った名前もあれば、僕が知らない名前もあった。
僕がシルク・ド・フリークに合流する前のメンバーなのかもしれない。
それから何度声を掛けてもクレプスリーは起きる気配がなかった。
少しの間を空けて次々と出てくる名前をベットの端に腰掛けながらそれを聞き続ける。
ミスタートールの名前やエバンナの名前も上がった。
最終的にはタイニーの名前すら出てきた。

でも、僕の名前は最後の最後まで一度だって出てくることは無かった。


それからクレプスリーが起きたのは30分ほどしてからだった。

「・・・・・・・やっと起きた?」
「・・・・・なんで不機嫌なのだ?」
「別に!あんたがさっさと起きてくれないから疲れただけだよっ!」

あれだけの名前が出ておきながら、僕を呼んでくれなかったことに苛立っているわけじゃない。
断じて違う!

「・・・・疲れた・・・・」

起き上がって早々、クレプスリーは盛大な溜め息を吐いた。
それを見て僕は余計に苛立ちが胸の中に広がった。

「あんだけ寝坊しておいてよく言う」

思わず語調がきつくなったが、訂正する気にもなれなかった。

「お前のせいだ。お前の」
「は?」

いきなり名前を上げられて変な声が出た。
なんでそこで僕のせいなんだよ。
言いがかりにもほどがある。

「意味わかんない」
「お前が勝手にいなくなるから我輩はあちこち探し回る羽目になったんだ」
「何の・・・・・・」

と、声を上げてふと思い至る。

「僕を・・・・・探していたの・・・・?夢の中で?」
「そうだ」
「バンパイアマウンテンや、シルク・ド・フリークを回って?最終的にはタイニーのところにまで足を向けて?」
「そうだ・・・・・・って、何で知っている?」

不思議そうにこちらを見やる。
なんでって、そりゃぁあれだけ言っていたらね。
でも本人は名前を呟いていたことに当たり前だけど気づいていないようだった。

「何でだろうね!」

とたんに胸の中の煤けた気持ちが洗い流された。
ちょっとだけいい気分だ。


寝言
(しょうがないから許してあげてもいいよ?)



どの時期の話なのか?時間軸がわからない。
適当に妄想していただけると助かります。
しかしクレプスリーは夢の中でもパパをしている。
いつだってダレンが心配なんですねわかります。
2010/07/10

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言葉にしなければ伝わらないことというのは、存外多い。
近親者への感謝というものはそれの最たるものと言っても良いくらいだ。
暗黙の了解に頼り続ければいつかしっぺ返しを食らうぞ!と言ったのは誰だったか?
もしかしたらそんなことを言った人はいないかもしれない。
それでも大抵の人は痛感している事実だ。
自身が伝わっていると思っていることの半分も他者には伝わらない。
それどころか勝手な曲解をされていることだって多い。
だから大切なことは言葉にする。
単純にして明解な答え。
簡単なようで、それはとてつもなくハードルの高いものでもあった。

ハードルを上げているのは己のプライドだとかそんなもの。
自分で自分を苦しめている。
僕はそんなマゾヒストなわけじゃないのに、どうして自分を追い詰めなくてはならないのだろう。
まったくもって不可思議な精神構造だ。
そんな風に創った神様とかいうのをぶん殴ってやりたくなる。

素直になればいい。
思っていることをそのまま吐き出せばいい。

 『ありがとう』と

 『感謝している』と

たったその一言でいい。
恥ずかしがることなんて無い。
単語を口にするだけ。
それだけでいいんだ。

「あの・・・・・・さ、クレプスリー・・・・・・」

つ、と前を歩くクレプスリーのマントを引く。
控えめに少しだけつまんで引き止める。

「・・・・・・・なんだ?」
「えっと・・・・・・その・・・・・・」

さぁどうしたダレン・シャン!?
こんなところで怖気づくな!
たった一言を言うだけだ。
何をためらうことがある。
素直な気持ちを素直に吐き出せ!

「いつも・・・・・迷惑掛けて・・・・ごめん・・・・・。見捨てないでくれて、ありがと・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

やっとの思いで搾り出した言葉だというのに、クレプスリーは目を見開いて身体を硬直させてしまう。

「何だよ・・・・どうかしたの?」
「いや・・・・・」

歯切れ悪くもごもご。
視線を外して明後日の方を見やって、ぽつり。

「明日は台風か・・・・・?」

それも冗談めかしてなんかじゃなく、真剣な表情そのものでそんなことを言う。
せっかく!
折角僕が普段言えていない事をちゃんと伝えてあげようと頑張ったのになんて仕打ちだ!
人の感謝は素直に受け入れろってママに習わなかったのかこのハゲ親父っ!!

「それとも・・・・・・まさかまた何か粗相をしたのではあるまいな?」

至極真剣にクレプスリーは問うてきた。
何でそうなるんだよっ!
ただ、純粋な気持ちで「ありがとう」を伝えただけなのに!
何であんたは疑うことしかしないんだ!
このバカっ!
あんぽんたんっ!
ウスラトンカチっ!

「さぁ、怒らないから素直に言ってみろ。何をした?」

だから!さっきから素直に言っているじゃないかっ!!

「・・・っ!あんたのことなんか知るもんかっっ!!」

もう絶対あんたには言ってやらないから!
ばかばかばかっ!



嫌いだ!
(嫌い嫌い大嫌い!―――嘘、ホントは大好き)




たまには素直になろうと思ったのに上手くいかずに空回りのダレン。
普段のツケが溜まっていたんですね。
時たま思い出したように素直になると、まるで狼少年のような扱い。
でもホントはクレプスリーはわかっていたりする。
あしらったのはクレプスリーなりのジョークとかユーモアとか照れ隠しのつもりだったんだよ。
完全駄々すべりの空回りだけどな!
2010/07/09
 

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